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今月の健康記念日

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 🕊人類の歴史とともにある感染症、結核
 
 結核は、エジプトのミイラからその痕跡がみつかるなど、太古から人類を苦しめてきた感染症です。日本でも、鳥取市にある弥生時代の遺跡から検出した人骨に、結核痕が確認されています。
 その結核が世界中で猛威を振るったのは、産業革命が起こった18世紀後半頃のことです。都市化が進展したイギリスで貧困層を中心に感染が広まり、ヨーロッパ諸国やアメリカへと伝播しました。日本も幕末、明治から昭和初期にかけて多くの死者を出しました。
 原因がわからず、多くの人の命を奪った結核。この難病の治療に道を開いたのがコッホでした。1882年3月24日、コッホは結核菌の発見を発表し、結核が人から人へ感染する伝染症であることを証明します。これにより、抗生物質「ストレプトマイシン」などの治療薬が開発され、BCGワクチン(いわゆる「はんこ注射」)の普及などもあって、結核は「不治の病」でなくなりました。
 コッホは結核菌以外にもコレラ菌、炭疽菌も発見し、これらの業績により1905年、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
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 🕊「再興感染症」として再び注目される結核
 
 日本では昭和初期まで、結核が日本人の死亡原因の一位を占め、「亡国の病」などと呼ばれたりしました。でも、第二次世界大戦後、国を挙げて予防や治療に取り組み、また生活水準も向上した結果、国内の結核による死亡率は急減しました。
 以降も低下が続き、一時、結核は撲滅されたと言われるほどになりましたが、1980年代になると都心部への人口集中や、戦前・戦後の流行期に感染した人々が、高齢化による免疫力の衰えで発症するようになり、結核罹患率の低下が鈍化してきます。そして、96~97年になると罹患率が増加に転じ、しばらく上昇が続いたことから、99年に国が「結核緊急事態宣言」を発し、国民に注意を呼びかけました。
その後、罹患率は減少傾向に戻りましたが、これをきっかけに、結核は「再興感染症」として再び注目されるようになりました。
 今でも日本では、毎年1万人以上の人が新たに結核を発症しており、約2000人が命を落としています。2021年は1万1519人が結核患者に登録されました。年齢層別では、15~19歳は減少しているものの、80~89歳が全体の29.9%を占め、90歳以上も14.2%と増加傾向が続いています。
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 🕊咳や微熱、倦怠感などが続いたら早く受診を
 
 結核は、結核菌によって引き起こされる感染症です。咳やくしゃみで結核菌が空気中に飛び散り、それを周囲の人が吸い込むことで感染します。日本では患者の約8割が肺結核ですが、ほかにも腎臓やリンパ節、骨、脳など、カラダのあらゆる部分に影響を及ぼします。
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肺結核の症状は、長引く咳(せき)、痰(たん)、微熱、倦怠感などがあげられ、ほかにも体重減少、食欲不振、寝汗など、風邪の症状と似ています。そのため、初期の段階で軽く考えて対応が遅れ、症状が進行してしまう傾向があり、重症化すると息切れや血の混じった痰が出始め、喀血(かっけつ)や呼吸困難で死に至ることもあります。
結核菌は感染しても多くの場合、カラダの免疫力によって封じ込まれるので、ほとんど発症することはありません。また紫外線に弱く、数時間日光に当たれば死滅します。
しかし、高齢や合併症、栄養不良、過労などで免疫力が低下すると、結核を発症する確率が高くなります。前述の通り近年は、結核患者に占める高齢者の割合が増加傾向にあります。2週間以上、咳や微熱が続いたり、カラダのだるさが取れない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。結核を発症しても、早期に治療できれば重症化を防げます。 
ただし、結核と診断されたら、医師の指示を守ってクスリを飲み続けることが大切です。ちょっと症状が良くなったからといって、クスリを飲むのをやめると、結核菌がクスリに対して抵抗力を持ってしまい、効かなくなります。家族や友人、職場の人など、身近な人たちへの感染拡大を防ぐためにも、くれぐれも注意しましょう。
 
 結核を予防するには定期健診をきちんと受けることはもちろん、免疫力が低下しないよう、十分な睡眠や栄養バランスのとれた食事、適度な運動など、規則正しい生活を心がけることが何より大切です。
 3月13日から新型コロナウイルスに対するマスク着用が、個人の判断に委ねられるようになりました。でも、不特定多数が集まる空間は、どのような菌が潜んでいるかわからず、感染予防の意識は持ち続けるべきでしょう。咳やくしゃみが出そうなとき、口元をティッシュやハンカチでおさえる習慣などは、これからもしっかり継続していきたいですね。
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参考:厚生労働省HP「結核」「BCGワクチン」、政府広報オンライン「あしたの暮らしをわかりやすく」、(公財)結核予防会、国立感染研究所サイト「結核とは」、大塚製薬(株)サイト「なかなか減らない結核」、Wikipedia等
    

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