みなさんは「生涯スポーツ」と聞いて、なにを思い浮かべますか?
ゴルフをアレンジした「ゲートボール」や「グラウンド・ゴルフ」、テニスから派生した「バウンドテニス」、バレーボール由来の「ビーチボールバレー」、武道系の「スポーツ吹矢」「スポーツチャンバラ」などなど…。
いずれのスポーツも年齢や性別、障がいの有無を問わず、だれでも簡単に楽しめるのが特徴であり、大きな魅力です。
そのような生涯スポーツの中から「グラウンド・ゴルフ」をピックアップし、その魅力や楽しさを3回にわたって紹介します。第1回目はグラウンド・ゴルフの歴史と特徴をみていきましょう。
なお、本特集は大阪体育大学の細川磐名誉教授のご協力を得て、『細川磐のグラウンド・ゴルフ読本』(オフィスなかおか刊、A5判:文庫)をもとに解説していきます。
◆グラウンド・ゴルフって、どんなスポーツ?
グラウンド・ゴルフはその名の通り、ゴルフをアレンジしてつくられたスポーツです。
ゴルフと明確に違うのは、ホール(穴)ではなくホールポストを狙う点。下のイラストのように専用クラブで直径6センチのボールを打ち、ホールポストに入れるまでの打数を競います。
◆グラウンド・ゴルフ誕生エピソード
グラウンド・ゴルフは1982年、国の生涯スポーツ推進事業を受け、鳥取県の泊村(とまりそん)で誕生しました。ちなみに泊村は合併して、現在「湯梨浜町」(ゆりはまちょう)に地名を変えています。
当時、高齢化が進んでいた泊村では、住民の健康づくりが深刻な課題になっていました。そこで、文部省(現文部科学省)の生涯スポーツ推進事業(国庫補助事業)の指定を受け、高齢者にふさわしい新スポーツの開発に取り組むことになったのです。
考案にあたり、泊村では県内外の学識経験者14人と同村教育委員会からなる専門委員会を設置。生涯スポーツの基本理念※1を尊重しながら試行錯誤を繰り返し、ゲーム草案の作成やルールの策定、用具の開発などが進められました。
一方、村内の老人クラブ連合や体育指導員も、専門委員会の草案などを実際に試すなど実践面で協力しました。
このように、さまざまな人たちの意見を取り入れながら改良を重ね、1982年12月15日、ついにグラウンド・ゴルフが産声をあげたのです。
高度な技術を必要とせず、ルールも簡単で、だれでもすぐに楽しめることから、新スポーツの誕生は県内外で大きな反響を呼びました。新聞、テレビなどマスコミ各社が頻繁に全国報道し、関心を寄せる団体も全国各地の老人クラブ連合から市町村教育委員会、社会福祉協議会、公民館、企業などへ拡大。グラウンド・ゴルフを全国的なスポーツにしようという機運が一気に高まりました。
以来、グラウンド・ゴルフは日本グラウンド・ゴルフ協会を母体に全国各地で普及活動が推進されており、登録会員数はここ数年18万人超を維持、国民体育大会(国体)の公開競技に名を連ねるまで成長しています。
◆グラウンド・ゴルフの特徴は7つ
グラウンド・ゴルフの特徴については、日本グラウンド・ゴルフ協会が①どこでもできる、②準備は簡単、③ルールは簡単、④時間の制限がない、⑤プレーヤーの数に制限がない、⑥審判はあなた自身、⑦高度な技術がなくてもできる──の7つにまとめています。
それぞれの補足説明は次の通り。
①どこでもできる
規格化されたコースを必要としません。プレーヤーの目的、環境、技能などに応じて、運動場、河川敷、公園、庭などどこでも、自由にコースを設定することができます。
②準備は簡単
ゴルフのように穴を掘る必要がなく、スタートマットとホールポストを設置するだけで準備は完了です。
③ルールは簡単
他のスポーツに比べて、ルールがきわめて簡単で、一度プレーすれば覚えられます。
④時間の制限がない
ゲームの時間が決まっていないので、時間に制約されることなく、技能の水準や仲間の数、あるいはコースの特性に応じて、プレーを楽しむことができます。
⑤プレーヤーの数に制限がない
グラウンド・ゴルフは1人でも、あるいは場所さえあれば一度に何百人もの人がプレーを楽しめます。ボールが空中を飛ぶことはないので、ホールの設置場所を工夫すれば、各ホールから同時にスタートしても、安全にプレーすることができます。
⑥審判はあなた自身
ゲーム中の判定はプレーヤー自身が行います。判定が困難な場合には、同伴プレーヤーに同意を求めます。
⑦高度な技能がなくてもできる
グラウンド・ゴルフの技能は他のスポーツと同じように、トレーニングによって向上します。しかし、ゲームを楽しむためには必ずしも高度な技術を必要としません。子どもから高齢者まですべての人が、楽しくプレーすることができます。したがって、グラウンド・ゴルフはファミリースポーツとして楽しむ条件をすべて備えたスポーツです。
以上がグラウンド・ゴルフの特徴ですが、いかがでしょうか?①の「どこでもできる」、⑤の「プレーヤーの数に制限がない」、⑥の「審判はあなた自身」などは、ちょっと注目されるのでは?
グラウンド・ゴルフは、決められたコース・人数でなければゲームができない、審判や指導者がいなければプレーができないなどの面をなるべくなくし、どんな条件でも楽しめるように考慮されています。
ただ、細かい制限がないかわりに、自分たちで創意工夫しながらコースを設定し、エチケットを守りながらプレーするといった“自律性”が求められます。特に審判を置かないのが、グラウンド・ゴルフがほかのスポーツと大きく異なる点。ゲーム中は自分自身が審判であることを常に自覚し、ルールに基づいて「適切な判断をする」こと、「自信を持って判定する」ことが大切です。
自分自身を厳しく律しなければいけないなんて、まさに“エルダー”にふさわしい“大人”のスポーツといえそうですね。次回はグラウンド・ゴルフの用具や基礎技能、コース設定を解説します。
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仕様:A5判(文庫)/126ページ
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ISBN978-4-909441-00-3
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