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エルスポ~ヘルスバレーボール

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 ラグビーボールを大きくしたような、愛嬌たっぷりのボールで楽しむ『ヘルスバレーボール』。独特な形のボールが予測不能な動きをし、本来のバレーボールとは一味違った面白さを体験できます。
 そんなユニークなスポーツの発祥地は千葉県流山市。日本ヘルスバレーボール連盟 流山本部(Japan Health Volleyball Federation、以下JHVF)が普及に取り組んでいます。
ヘルスバレーボールの練習や試合では、空中で変化するボールにプレーヤーが翻弄され、ハプニングや珍プレーが頻発! 観戦する人はもちろん、プレーヤー自身も思わず笑ってしまいます。
ルールが簡単で親しみやすく、楽しみながら健康・体力づくりができることもあって、近年愛好者も飛躍的に増加。昨年は文部科学省より、JHVFが「生涯スポーツ優良団体」を受賞しました。
 今回からスタートする『elder sports』(エルスポ)。その初回を飾るのは、今注目のヘルスバレーボールです!
<取材協力:日本ヘルスバレーボール連盟 流山本部
 
 


1. ヘルスバレーボールって、どんなスポーツ?

 
◎お母さんたちの運動不足解消を目的に考案
大きなラグビーボールを思わせるボールの正体、それはストレッチ体操用のヘルスボール<1>です。色や形などは、開発された60年前当時から変わっていません。
そのヘルスボールを使用し、バレーボール形式で行うヘルスバレーボールの誕生は意外と古く、1978(昭和53)年頃に遡ります。流山市社会体育課(現スポーツ振興課)の職員が、母親たちの運動不足解消を目的に考案しました。最初はヘルスボールを使ってストレッチやキャッチボールを行っていましたが、もっと楽しめる方法がないか模索する中で、バレーボールをすることを思いついたそうです。
社会体育課ではさっそくルールを策定し、市内各地の小学校PTAにヘルスバレーボールを紹介。子育て中で軽い運動を求めていたお母さんや、「ママさんバレーボール」に熱中していたお母さんたちを中心に広まっていきました。
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1ヘルスボール】
 ボールの形状は楕円形で、長径約90㎝、短径約50㎝の空気で膨らませた
 ビニールボールを布で覆っている。JHVF認定ボールは現在、スポーツ器
 具・公園遊器具総合メーカーの(株)アカバネ(埼玉県越谷市)で製造中。 
 右写真でヘルスボールを持つのはJHVFの木村敏彦会長。

 

 
◎“女性のスポーツ”にお父さんたちも参戦!
もともと“女性のスポーツ”として考案されたヘルスバレーボール。草創期はお母さんがプレーし、それを子どもと一緒に見守るお父さんの姿が多くみられたそうです。そのお父さんたちも段々とヘルスバレーボールに興味を持ち、「自分たちもやってみよう!」と参加するようになって、現在の男女混合チームで楽しむ文化が育まれました。
「男性と女性が同じチームを組んで、一緒に楽しめるスポーツはあまりないのでは? そこがヘルスバレーボールの魅力であり、社会的に評価されている点です」
と語るのは、JHVFの木村敏彦会長。初代・2代と女性会長が続き、3代目にして誕生した初の男性会長です。
「ヘルスバレーボールの競技人口は全国で約5000~6000人(JHVF独自リサーチ)。そのうち、約700人が流山市です。男女比は全国だと男性が多数を占めますが、流山市では依然女性が多いですね」
愛好者の年齢層は30~40代が中心で、今は小学生の競技人口が急速に伸びていると木村会長。特に流山市では全小学校にクラブチームがあり、「小学生大会」もJHVFでは開催しています。
「子どもたちが楽しむスポーツといったら、ドッジボールやサッカー、野球、ミニバスケットボールなどさまざまありますが、流山市ではヘルスバレーボールが一番人気です(笑)」(木村会長)
でも、ここまで盛り上がるのに、実は何年もかかりました。
 
 
◎千葉国体のデモスポ”採用で一気にブレイク!
今年で41年の歴史を数えるヘルスバレーボールですが、愛好者が急増したのはここ数年のこと。2010(平成22)年の千葉国体<2>で「デモンストレーションスポーツ」に採用され、大きな転機を迎えました。
「以前から流山市ではヘルスバレーボールの同好会がつくられ、市主催の大会などもあって、各チーム同士の交流も盛んでしたが、あくまでも市内でのこと。それが千葉国体の“デモスポ”で登場し、『なんだ、これ!?』って注目されて(笑)。国体の後、全国各地から問い合わせがきて、メディアの取材もすごかったです」(木村会長)
ヘルスバレーボールの誕生から最近までの歩みは下の通り。誕生した昭和53年から平成7年までの間、特に大きな動きはなく、ローカルなスポーツに留まっていたことがわかります。
 
バレー年表
 
それが1995(平成7)年に流山市社会体育課主催の市内大会が開催され、翌年に東葛飾地区スポーツレクリエーション大会の種目に採用されて以降、動きが活発化し、1999(平成7)年になると「流山市ヘルスバレーボール連盟」が発足します。
そして、4年後には井崎義治流山市長(現役)の「全国へ流山市発祥のスポーツとして発信しよう!」との音頭の下、流山市ヘルスバレーボール連盟は「日本ヘルスバレーボール連盟流山本部」JHVF)に改称。競技性を重視した男女混合チームによる「年間リーグ選手権」、レクリエーション面を主体とする「全国フェスタ」など、各種大会(※概要は後述)を充実させていきます。
その間にもJHVFは、2015(平成27)年に千葉県体育功労者等顕彰の「社会体育優良団体」、昨年10月には文部科学省の「生涯スポーツ優良団体」をそれぞれ受賞しました。
このように、ヘルスバレーボールは知名度の向上とともに、運動不足な大人の体力増進や子どもたちの健全育成、幅広い世代間交流などを促すスポーツとして社会的評価を高めています。

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hv05.jpg     ☑2千葉国体
      本大会会期:2010年9月25日〜10月5日
      総合開会式場:千葉マリンスタジアム
      総合閉会式場:千葉県総合スポーツセンター陸上競技場
      ヘルスバレーボール大会
     会場:キッコーマンアリーナ
     参加者:600名
 
 

2. ヘルスバレーボールの大会やルール、楽しみ方

 
大会とルールについて~ルールは3つある!?
ヘルスバレーボールはレクリエーションとして楽しめる一方、近年技術の向上に伴い、かなりハードな競技としても発展しつつあります。
そのためJHVF主催大会<3>は、レクリエーション主体「全国フェスタ」「小学生大会」と、競技性を重視した「年間リーグ選手権」「市長杯」「女子大会」に分けられ、ルールもこれら大会に合わせて「レクリエーションルール」「小学生ルール」「公式ルール」の3つがあります。
「全国フェスタ」(開催時期:毎年夏、今年は8月予定)「小学生大会」(開催時期:毎年2月)本大会と呼ばれ、ヘルスバレーボールを思いっきり楽しんでもらうことに主眼を置いています。特に「全国フェスタ」は参加チームも多く、一番の盛り上がりをみせ、昨年は全国各地から34チーム・220人が参加しました。ルールは全国フェスタが「レクリエーションルール」、小学生大会が「小学生ルール」をそれぞれ適用しています。
「年間リーグ選手権」(開催期間:全12節・22試合)、「市長杯」(開催時期:毎年12月)、「女子大会」(開催時期:毎年3月)はレクリエーションに飽き足らず、本格的な試合をしたい人のために創設されました。特に年間リーグ選手権は競技性が強く、参加チームがプロ野球のペナントレースのように年間の勝敗で順位を争います。ルールについては、いずれの大会も「公式ルール」が適用されます。
キッコーマンアリーナ  
 ☑3【JHV主催大会の会場】
 JHVFが主催する大会は、すべて流山市のキッコーマンアリーナ
 (流山市民総合体育館:流山市野々下1‐40‐1)で開催されている。
 
 


 ◎JHVF推奨の「レクリエーションルール」を解説
3種類あるヘルスバレーボールのルールですが、本特集ではJHVFが推奨する「レクリエーションルール」を解説します。
まず、「レクリエーションルール」の内容は下の通り。JHVFのホームページ(http://jhvf2012.main.jp/?page_id=39)から、「小学生ルール」とともにダウンロードできます。ちなみに「公式ルール」は、アカバネ製ボールを購入するともらえます。
ルール2
 
主な内容を補足すると、(1)の男女混合でチーム編成するのがヘルスバレーボールの特徴であり、社会的に評価されている点。公式戦の場合は控え選手も含め、ゼッケンの付番、もしくはゼッケン付きユニフォームの着用を推奨しています。
(2)のバドミントンのダブルス用コートは下の通り。ネットの高さは2m。小学生は1.8mです。審判台は0.70~1mの高さのものが適当で、ビール瓶ケースなどを代用してもOK。
 
コート
 
(4)のローテーションは下の通り。ヘルスバレーボールは必ずローテーションしなければなりません。つまり、すごいサーバーが一人いても勝てないということ。ローテーションミスは相手に1ポイント加算されます。
 
ローテーション
 
(5)のサーブは打つのでなく、両手で持って相手コートに投げ入れます。そのため誰でも簡単にでき、サーブができなくてつまずくことはありません。もっとも投げ入れ方については、ボールをスクリュー状に回転させたり、高く上げて変化をつけるなど、愛好者の間でさまざまに工夫が凝らされています。
(7)(5)と同じく通常のバレーボールと大きく異なる点。1回での返球は反則となり、2〜5回で相手に返球します。バドミントン用の狭いコートに6人いるため、チームのみんながボールに触れて楽しめます。
なお、ボールは体のどの部位に触れてもOKですが、蹴るのはJHVFではあまり推奨していません。もちろん反則ではありませんが、「ヘルスバレーボールはあくまでも手でボールを扱うスポーツ」(木村会長)とのこと。弾みや不可抗力は仕方ないとして、故意にボールを蹴るのはエチケット面から控えましょう。
(10)のジャッジが難しいケースでは、ボールのインとアウトの判定が挙げられます。下図の通り、ライン上方延長上にボールがかかっていればインです。ボールの着地地点ではありません。
 
インとアウト
 
(11)については、小学生は7分制の1セットマッチ。年間リーグ選手権など「公式ルール」にもとづく大会は、15点先取の3セットマッチです。
 
 
◎ヘルスバレーボールのコツ
ヘルスバレーボールのコツとしては、自分たちのチーム内ではなるべくボールを回さない②自チーム内で回すときは、ボールが変化しないよう気をつける相手チームに返すときは、ボールの端を打ってクルクル回すなど受けづらいように返す――などが挙げられます。
 ちなみにのアタックは、ボールの真ん中を打つのが基本です。
 
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3. ヘルスバレーボールの今後の躍進に期待!

 
◎JHVFの組織体制は?
ヘルスバレーボールの普及に取り組むJHVF。正式名(日本ヘルスバレーボール連盟流山本部)に「流山本部」を付けていますが、まだ全国に展開する傘下組織はありません。
ただ、独自に協会や同好会などを立ち上げている地域は多く、下の都道府県などは活発な動きがみられます。JHVFではそれら地域の団体に対し、アドバイスなどを通じて交流を深めている状況です。
<ヘルスバレーボールが盛んな都道府県>
 北海道、宮城、茨城、群馬、埼玉、長野、愛知、広島、福岡など
 
JHVFの加盟団体数は2019年4月現在で5団体、80名(男性48%、女性52%)が登録しています。ほかにも賛助会員として、認定ボール製造のアカバネや地元企業などが名を連ねています。参考までに年間会費は下の通り。
個人:2500円 ※初期登録のみ連盟Tシャツ支給
10人以上のチーム:個人2500円+3000円 ※初年度登録のみ
(10人チームの会費:個人2500円×10人+3000円 ※初年度登録のみ=計年間2万8000円)
 ・賛助会員:一口 1万円
 
なお、JHVFでは昨今のヘルスバレーボールの知名度向上や、文部科学省の「生涯スポーツ優良団体」受賞を受け、本年度中に法人化(公益社団法人)する計画です。法人化した暁は、各地の協会も傘下に加わるよう協力を呼び掛けています。
 
 
◎JHVFの活動内容は?
JHVFの主な活動は前述した各種大会の運営のほか、審判員・講師の全国派遣JHVF公認指導員資格取得制度の実施――などを行っています。
では、学校のクラブ活動や地域スポーツイベントのサポートなどで、審判員や講師を派遣しています。実績は下の通り。
 
教育機関:小学校、中学校、高等学校、短大、大学、養護学校
企  業:ブリヂストン、ANA等
公的機関:神奈川県警、教育委員会等
<補足>
・特に小学校への講師派遣が活発で、地元の千葉県内はもちろん、群馬、栃木、埼玉、神奈川など関東一円に講師を派遣している。
・大学の派遣先例:慶応義塾大学のスポーツサークル等
・教育委員会からの依頼は、体育教員の研修会での指導が多い。
・養護学校や高齢者施設ではバレーボールをせず、椅子に座ってもらい、テーブルでヘルスボールを使ったレクリエーションを楽しんでもらうプログラムを実施。
 
③の公認指導員資格取得の講習会は、受講希望者が10人以上集まれば実施しています。最近は千葉以外の地域で開催する機会が増えており、受講者はスポーツ推進委員など行政関係者が多いそうです。
 
 
◎ヘルスバレーボールの普及状況と課題
ヘルスバレーボールは認知度向上に伴い、国内ではほぼすべての都道府県で普及しつつあります。
また、海外でもタイやフィリピン、ラオスなど東南アジアで愛好者が増加しており、今年は指導者をフィリピンへ派遣しました。JHVFの講師が親善大使の役割も果たしているそうです。
このような状況を背景に、今後の課題としてJHVFの木村会長は、公認指導員の育成気軽に練習できるスペースの提供障がい者と健常者が一緒に楽しめるルールの策定――の3点を挙げます。
については、「今、まさに直面しているのが人材不足」とのこと。現在公認指導員は全国に約200人いますが、これをさらに増やし、国内の隅々まで何かあったら迅速に対応できる体勢を整えたい考えです。
の練習場所は、公共施設や小学校の体育館を利用するチームが多い状況です。しかし、公共施設は利用料金の問題もあるため、費用を気にせず、気軽に楽しめるスペースが提供できないか、JHVFでは目下試行錯誤中です。
では現在、聴覚に障がいを持つ愛好者が多く、そうした人たちを対象とした大会も開催されているそうです。「今後、障がい者と健常者が一緒に楽しめるルールを策定し、障がい者もヘルスバレーボールが楽しめることをもっとPRしたい」と木村会長は意気込んでいます。
 
 
◎ヘルスバレーボールで思いっきり笑おう!
初心者向け講習会では、10分ほどの簡単な練習でプレーできるヘルスバレーボール。審判も「レクリエーションルール」なら覚えやすく、すぐできるので、あまり時間を要さず試合を楽しめるのが魅力です。
しかし、独特の形状をしたボールは予想外の動きをし、どこに飛んでいくかわからないのでハプニングは常に付きもの。そのためJHVFでは、ミスしたチームメイトを責めないよう厳しく指導しています。
また、試合前後の「あいさつ」もヘルスバレーボールの大切なエチケットと木村会長は語ります。
「このようなボールだから上手に扱えなくて当たり前。特に小学生には、ミスを人のせいにしちゃいけないよと教えています」
昨年10月、文部科学省から「生涯スポーツ優良団体」を受賞した際、柴山昌彦大臣から「全国に広めてください」と激励の言葉をもらったJHVF。法人化を目指し、さらなる飛躍に向けて邁進中ですが、決して競技志向には走らないと木村会長は強調します。
「競技に走ると、ヘルスバレーボールの愛好者人口は増えないと思います。ボールがどこに飛んでいくかわからないのが面白くて、それを追いかける姿も滑稽で笑っちゃうのがいいんです。このスポーツを普及させて、みなさんに思いっきり笑ってほしいですね(笑)」
真剣な面持ちでガチンコ勝負するより、みんな笑顔で元気よくプレーする光景が絵になるヘルスバレーボール。このスポーツの広まりとともに、世の中が明るくなりそうな予感がします!
 
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 ▲花と緑の祭典「流山グリーンフェスティバル2019」(5/4、流山おおたかの森駅 南口歳広場)で
  ヘルスバレーボールを紹介。写真左下は地元の小倉ベーカリーが作る「ヘルスバレーボールぱん」。



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 <日本ヘルスバレーボール連盟 流山本部>
会 長:木村 敏彦
所在地:千葉県流山市南流山1-7-2-708
 TEL090-3407-5961FAX04-7199-2494
 e-Mailjhvf.kimura@gmail.com
 ホームページ:http://jhvf2012.main.jp/

 (次回エルダー・スポーツは、フィンランド発祥の「モルック」を紹介!)

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