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今月の健康記念日

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12月27日は「寒天発祥の日」です。京都市の伏見区が寒天の発祥地であることをアピールしようと、同市を拠点に活動する「伏見寒天記念碑を建てる会」が制定し、(一社)日本記念日協会も令和元(2019)年に認定・登録しました。
日にちの根拠は、江戸時代、寒天の元となるトコロテンが伏見区で島津藩に提供されたのが現在の暦で12月末にあたること。そして、伏見の「ふし(24)+み(3)」が27(日)になることから。
わが国で製造方法が発見され、今や世界各国に広まる寒天。今回は寒天の誕生秘話やその種類、健康効果、ゼラチンとの違いなどを紹介します。
 
 
🕊寒天の誕生は偶然の発見から
 
寒天はテングサやオゴノリなどの紅藻類(こうそうるい)が凍結・乾燥したものです。「トコロテンを凍結・乾燥したもの」と説明した方がわかりやすいかもしれません。
トコロテンが遣唐使によってわが国にもたらされたのは、1000年以上前の飛鳥〜奈良時代のこと。鎌倉時代には京都でトコロテンの店も開かれていたそうです。そのトコロテンから寒天をつくる方法を発見したきっかけは、今から350年前のちょっとした出来事からでした。
江戸時代(1658年頃)のある冬、現在の伏見区御駕篭町で旅館を営んでいた美濃屋太郎左衛門が島津大隅守の滞在の折、戸外にトコロテンを置き忘れてしまいました。数日後、そのトコロテンが凍結し、日中に溶けて水分が抜け、干物状になったものを発見。試しにそれを煮溶かし、冷やして固めたところ、従来のものより美味しく海藻臭さもしないトコロテンができあがりました。
この不思議なトコロテンを、京都の宇治で黄檗宗(おうばくしゅう)を開いた隠元(いんげん)禅師に食してもらったら、精進料理の食材として利用できると賞賛され、その際に「寒天」と名付けられました。ちなみに隠元禅師は「いんげん豆」の命名者としても有名です。
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🕊戦前の日本の主力輸出品だった寒天
 
寒天の製造技術は誕生から約100年の間、伏見のごく一部の人たちの秘宝とされてきましたが、天保年間(1830年頃)になると隣接する丹波国に伝わりました。そして、当地に行商に来ていた信濃国諏訪郡(現長野県茅野市)の行商人が製造技術を学んで地元で広め、やがて信州の名産品となる角寒天が生まれます。一方で、発祥地の伏見での寒天製造は明治20(1887)年頃に終焉を迎えました。
その後、寒天は岐阜県恵那市など全国各地で盛んに作られるようになり、海外でも明治14(1881)年、ドイツの細菌学者ロベルト・コッホが寒天培地による細菌培養法を開発したことから国際的な需要が増加、昭和初期頃は寒天が日本の主力輸出品の一翼を担いました。
第二次世界大戦後は、自然に頼らない工業的な製造技術の確立で粉末寒天が開発され、1970年代には製造会社が35社ほどあったそうです。しかし、次第に海外からの工業製品の輸入が増大していき、2000年代に入るまでにそのほとんどが消滅してしまいました。現在、国内の製造会社は5社ほどが存続しており、角寒天は茅野市、細寒天は恵那市を主産地として製造されています。
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🕊便通の改善に効果発揮! 食物繊維が豊富な寒天
 
テングサやオゴノリなどから作られる寒天は、食物繊維を豊富に含んでいるのが特徴。その含有量は寒天100グラム中79グラム(文部科学省『食品成分データベース』)に達し、あらゆる食品の中でトップクラスを誇ります。残りは水分と微量のビタミン類、カリウム・カルシウム・鉄といったミネラルなどです。
食物繊維は人の消化酵素で分解されない成分で、大腸に達して便の量を増やす整腸作用が注目されています。また、急激な血糖値の上昇を抑える作用や、コレステロールの吸収を防ぐ効果も知られており、お腹が膨れて満腹感も出るので、食べすぎを防ぐなど肥満防止の効果もあります。以上から食物繊維の宝庫である寒天の健康効果は、①便通の改善、②血糖値の上昇抑制、③動脈硬化の予防、④肥満の防止(ダイエット効果)などが挙げられます。
厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によると、1日に必要な食物繊維の摂取量は18~64歳の男性で21グラム以上、女性で18グラム以上に設定されています。性別を問わず、あらゆる世代で不足がちとされている食物繊維。寒天をごはんに混ぜて炊くなど工夫して、上手に摂取したいですね。
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参考:長野県寒天水産加工業協同組合サイト「はじめませんか? 寒天生活」、伊那食品工業サイト「かんてんぱぱの寒天教室」、マツキ 寒天オンラインショッピングサイト「寒天は私たちを元気にする力がある」、PR TIMES MAGAZINE、日本調理科学会誌Vol45、カラダ二イイコト(ZENBサイト)、Wikipedia等
 
    

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