エルスポ~タスポニー
- 2022/02/17
- 10:30
名古屋といえば、金のシャチホコが出迎えてくれる名古屋城、近年パワースポットとして注目を集める熱田神宮、味噌カツ、手羽先、ひつまぶし……などなど。
でも、本物の“名古屋通”を自慢したいなら、ぜひ「タスポニー(TASPONY)」を知っておくべきでしょう!
タスポニーは、スポンジボールをテニスのように手で打ち合う名古屋発祥のニュースポーツです。ふわふわなボールだから安心・安全で、ラケットなどの道具は不要。ルールも簡単なので、子どもから高齢者まで気軽に楽しめます。
また、広い場所でなくてもプレーができ、運動量も適度なため、夢中になってボールを追いかけているうちに運動不足やストレスを解消できるのが利点です。
名古屋はもちろん、東海地方ですっかりお馴染みのニュースポーツとして親しまれているタスポニー。その誕生経緯やルール、近況などを紹介しましょう。
1.タスポニーって、どんなスポーツ?
ふわふわのスポンジボールをテニスのように手で打ち合う名古屋発祥のニュースポーツ、「タスポニー(TASPONY)」。ドライブサーブ、カットサーブ、ボレー、スマッシュ、ロブなど、テニスと何ら変わらない本格的な技術もあり、迫力満点のゲームが楽しめます。
そんなニュースポーツが誕生したのは、今からちょうど40年前の1981(昭和56)年3月のこと。考案したのは名古屋YMCAのスタッフだった山口榮三さん(現日本タスポニー協会事務局長)です。
当時名古屋YMCAでは、米国製リハビリボールを使うニュースポーツの研究開発に取り組んでいました。その最中、山口さんが息抜きで仲間とそのスポンジ製ボールを手で打ち合って遊んでいるうちに、ルールを考え、ネットやコートもつくり、次第にスポーツとしての形が整っていったそうです。
ちなみに「タスポニー(TASPONY)」の名前の由来は、名古屋YMCAの所在地である名古屋市熱田区の「田」からとった「TA」、スポンジ(SPONGE)ボールの「SPON」、YMCAの頭文字の「Y」を組み合わせたものだとか。ほかにも「ナスポニー」(名古屋の「NA」をつけた)、「ジャスポニー」(ジャパンの「JA」をつけた)といった候補名も挙がりましたが、語呂の親しみやすさで「タスポニー」に決まったそうです。
タスポニー考案直後の81年4月、名古屋YMCAではさっそく「日本タスポニー連盟」を発足させ、普及指導員養成講習会を開くなど普及活動に取り掛かります。日本タスポニー連盟はその後、「日本タスポニー普及協会」と改称し、ルールの完成をみた92年4月、「日本タスポニー協会」(以下、日本協会)と現在の名称になります。
日本協会の初代会長には名古屋YMCAの総主事が就き、事務局もその後20年以上にわたり同YMCA内に置くなど(現在は千種区のアルゴジャパン株式会社内)、名古屋YMCAはタスポニーの普及発展に大きく協力していきます。タスポニーの40年にわたる主な歴史は下の通りです。


タスポニーの特色は、日本協会によると下の点を挙げます。
① スポンジボール使用のため安全である。
② 広い場所がいらない(テニスコートの4分の1ほどの広さでOK!)。
③ 道具が少なくてすむ(手で打つためラケットが不要)。
④ 簡単に習得できて飽きにくい。
⑤ 右手、左手を使うためバランスの良い発達が期待できる。
運動量が適度である。
タスポニーの競技人口については、現在国内では東海地方を中心に約6000~1万人いるそうで、愛知や岐阜、三重の3県に日本協会傘下の県協会が設立されています。
また国内だけでなく、フィリピン、タイ、インドネシア、香港、台湾、韓国といったアジア諸国にも普及しており、2005年の愛知万博「愛・地球博」ではパートナーシップ事業として、初の国際大会を開催しました(会場:愛知県常滑市「常滑市体育館」)。以降も国際大会は度々催されており、2017年までに第13回大会(香港)を数えます。ささやかながら“アジアの人々の架け橋役”を担っている一面もあるタスポニー。どちらかといえば、国内より海外の方が先行して普及しているような印象を受けます。
2. タスポニーの道具、競技の種類&コート、ルール
◎道具~人間の皮膚に近い材質、適度にバウンドする硬度のタスポニーボール
ラケットなど、道具のいらない手軽さが魅力のタスポニー。必要なのは「タスポニーボールだけ」といってもいいでしょう。これさえあれば、どこでも楽しめます!
人間の皮膚に近い材質のスポンジを使用しているので、手や体に当たっても衝撃がなく、痛くありません。それでいて、コートに落ちたとき適度なバウンドするように(150㎝の高さからコートに落とし、ボール下端で25~35㎝の高さにバウンドするのが標準)、硬度もしっかり考えて設計されています。
このタスポニーボールの完成によって、テニスや卓球のようなラケットを使わず、素手で打ち合うことのできる手軽で新しいスタイルの球技が実現しました。
なお、タスポニーボールは元々リハビリ用スポンジボールをヒントに開発されただけに、健康・体力増進のフィットネスや介護予防体操にも活用されているそうです。
▲ネットをコンパクトに分解して、タスポニーボール4個をスポーツバッグに収納したセット(詳細は日本タスポニー協会HPを参照)。
◎タスポニーの種類&コート~子ども・高齢者向け、ファミリー向けがある?!
タスポニーの種類には下の通り競技タイプのほか、子ども・高齢者向け、ファミリー向けを含む3つのバリエーションがあります。
①タスポニー(競技タイプ)……いわゆる一般的なタスポニー。大会では男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルスの5つの競技種目がある。
②ソフトタスポニー(レクリエーションタイプ、高齢者・低体力者向け)……1983年、高齢者の普及を目的に愛知県小牧市教育委員会が開発した「シルバータスポニー」が前身。タスポニーを考案した日本協会事務局長の山口さんも原案作成に関わっている。2005年に子どもから高齢者まで、幅広い年齢層に楽しんでもらおうと「ソフトタスポニー」に改称した。
一般のタスポニーと比べてルールがやさしく、コートのサイズも若干違いがある(詳細は後述)。競技種目は男女ダブルスと混合ダブルスのみで、シングルスはない。
③ファミリータスポニー(レクリエーションタイプ、ファミリー向け)……2015年に考案された新種目。子どもと大人が助け合い、協力しあって楽しむ4人制のタスポニーで、ファミリーチームの参加を想定している。既存のバドミントンコートが利用できるため、コート設営の面倒がない。
コートのサイズについては、①タスポニーは8m×4.1m、ネットの高さ70㎝です。ラインの幅は4~5㎝とし、色は白と定められています。しかし、色についてはコートの状況に応じて、変更してもOKです。
②ソフトタスポニーのコートは6m×4mで、子どもや高齢者が無理なく動ける設定になっています。一方、ネットの高さは80㎝と、①タスポニーより10㎝高くしています。これは、ネットが高くなることにより打球が高くなるため、無理なく打球できるようになるためです。
◎タスポニーのルール~3種目とも“デュース”がない?!
それではいよいよ、①タスポニー、②ソフトタスポニー、③ファミリータスポニーのルールを解説していきましょう。
① タスポニー
ゲームは21点3ゲームマッチで、2ゲーム先取したら勝ちとなります。ただし、21対21となってもデュースはありません。
なお、得点及びセット数は競技者の年齢層等により、ローカルルールで減らすことも可能です。
<競技の進め方>
①まず両チームの代表者がジャンケンして、勝者がサービス(ボール)権かコートのいずれかを選ぶ。
②主審の「レディー」の声でポジションにつき、「プレイタスポニー」にて競技を開始する。
③得点はラリーポイント制。サービス権がある・なしに関わらず、勝てばポイントが得られる。負けた場合はサービス権が移動する。
<サービスについて>
①サービスは「サービスエリア」から行う。サービスエリアは、ベースライン後方サイドラインとセンターラインの延長線の中(前掲のコート図を参照)。
②得点が偶数(0点含む)のときは右サイドから、奇数のときは左サイドからサービスを行う。
③サービスの方法は、ボールを落下させ、ワンバウンド後、手を使って打つ。相手側コートの「サービスコート」に打球できた場合のみ、サービスは成功。
④ボール落下後、サービス動作を行う前(打つ前)だったら、サービスをやり直すことができる。
⑤ダブルスで連続得点し、サービス権をキープしている場合、そのサーバーの位置は、サービスエリアを交互に移動してサーブを行う。
<レシーブについて>
①レシーブする側は、サービスの場合のみ、ボールがワンバウンドしてから返球しなければならない。
②サービス以外はダイレクトの返球でも、ワンバウンドの返球でも両方OK。ただし、2バウンド以上の返球は失策となる。
<許容部位について>
①手首より先の部位(手のひら・手の甲)であればどこでもよい。
②右手・左手どちらの手でも打球できるが、両手を同時に使用すると失策になる。
<フォルトについて>
①オーバーネット……打球がネットを越える前に打つ。
②タッチ・ザ・ネット……ネットに体の一部が触れる。
③ダブルタッチ……味方同士で連続して打球する。
④ドリブル……同一プレーヤーが2回連続でボールに触れる。
⑤ホールディング……ボールをつかむ。ボールをすくう。
⑥ダブルハンド……両手でボールを打球する。打球しようとした動作がある。
⑦ビサインドハンド……手(手のひら・手の甲)以外で打球する。
②ソフトタスポニー
ゲームは8点3ゲームマッチで、2ゲーム先取した方が勝ちとなります。得点はラリーポイント制なので、サーブ権に関係なく得点が入ります。ただし、7対7となってもデュースはありません。
なお、ゲーム数は状況によって1ゲーム制で行うことも可能です。
<①タスポニーとの違い1:競技の進め方、サービス>
①ジャンケンで勝ち、サービス権を選んだら、ペアが交互2回ずつ、計4回サーブができる。
②サービスは1回につき2本までできる。ただし、2本目のサービスができるのは1本目を失敗したときで、2本目も失敗したら相手方の得点となる。
③サービス権が移動するのは、得点に関係なく規定の4回を終えたとき。あるいは、ゲーム中に双方の合計得点が4点(例:1対3、2対2)になったとき。
<①タスポニーとの違い2:フォルトについて>
・ラインクロス(サーバーの足が規定の範囲を越えたとき)。
・サービスボールが落下中にサーバーの身体または、着衣に触れたとき。
・サービスを中止する意志が明らかでないとき。
・サービスをしたプレーヤーが、ボールが相手コートに着地するまでを待たず、自陣コートに入ったとき。
・サービスしたボールがネットに触れたとき。
・インターフェア(相手プレーヤーのプレーを妨害したとき)。
③ファミリータスポニー
1チーム4人の構成は、年齢性別を問わず大人2人、子ども(小学生以下)2人とします。なお、大会に応じてチーム構成は変更してもOK(例:大人4人、男女別、男女混合チーム等)。
<①タスポニーとの違い:競技の進め方、サービス>
ジャンケンで勝ち、サービス権を選んだら、右側の前衛(コート図のAの人)がサーブをします。
サーブする場所は、タスポニーではサービスエリア(ベースラインの後方)ですが、ファミリータスポニーではサービスコートの内側(Aの位置)です。
得点したら、ローテーションしてBの人がAに移動し、サーブします。サーブ側が得点してもローテーションするので、同じ人が連続してサーブすることはありません。レシーブ側が得点しても同様に、Bの人がAに移動し、サーブします。
<ファミリータスポニーの特色>
ファミリータスポニーは子どもと大人が一緒に楽しめるように、大人にプレー上の制約があり、ラリー中にサービスラインを越えてスマッシュを打ってはいけません。
ヒッティングボレーは可としていますいが、大人のみの構成チームによる場合はこのルールは適用されません。
3. 今後の躍進に期待が高まるタスポニー
タスポニーの道具や競技のバリエーション、ルールなど、いかがでしたか?
なんとなく、ふわふわなタスポニーボールの感触を確かめて、遊んでみたくなったのではないでしょうか? 「タスポニー」という名前自体にも、そのように人を惹きつけ、親しみを感じさせるやさしい響きがあります。
名古屋で生まれ、東海地方を中心に普及しているタスポニーですが、その珍しさから明治大学のマイナースポーツ研究会が度々都内で体験会を実施しているほか、早稲田大学のサークルWILD359ersも一昨年2月、所沢の同大学体育館などで近隣の子どもたちと大会を開催、関西でも天理大学が一昨年と昨年の12月に授業でタスポニーを行いました。
▲上:天理大学、下:早稲田大学。

ほかにも、名古屋のマニアックな話題を取り上げるTVアニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき』にタスポニーが登場し、若者たちの熱い注目を集めるなど知名度を上げつつあります。
現在、日本協会が主催しているタスポニーの公式大会は下の通りです。
・「日本選手権ファミリータスポニー大会」
開催時期:会場確保等の関係で開催時期・場所は年度によりさまざま。
募集対象:小学生以上の男女。
・「日本選手権ミックスダブルス大会」
開催時期:会場確保等の関係で開催時期・場所は年度によりさまざま。
募集対象:中学生以上の男女。
特記事項:幅広い年齢の参加を想定し、年齢別に3部門<ペア合計年齢99歳以下、同100歳以上、同130歳以上>を設定)
・「日本選手権シングルス大会」
開催時期:会場確保等の関係で開催時期・場所は年度によりさまざま。
募集対象:中学生以上の男女。
特記事項:幅広い年齢の参加を想定し年齢別に3部門<ペア合計年齢99歳以下、同100歳以上、同130歳以上>を設定)
・「日本選手権ダブルス・ソフトタスポニー大会」
開催時期:会場確保等の関係で開催時期・場所は年度によりさまざま。
募集対象:中学生以上の男女。
特記事項:幅広い年齢の参加を想定し年齢別に3部門<ペア合計年齢99歳以下、同100歳以上、同130歳以上>を設定。また、ソフトタスポニー大会は小学生の部を設定することもある。
▲タスポニー日本選手権ミックスダブルス大会の様子
昨年はタスポニー誕生40周年のアニバーサリーイヤーでしたが、やはり新型コロナの影響を大きく受け、講習会や指導者養成講習会、役員・指導員研修など、恒例事業が軒並み中止に追い込まれました。
それでも、第76回国民体育大会「三重とこわか国体」で予定されていたデモンストレーション競技は、7月11日、四日市市総合体育館で無事に開催され、万全な感染症対策のもと、120人の参加者が笑顔いっぱいにタスポニーを楽しみました。
また、10月10日には「ぎふ清流レクリエーションフェスティバル2021」(岐阜県レクリエーション協会主催)に併せて「ぎふ清流レクリエーションフェスティバル2021 ‒タスポニー交流大会‒」が開催され、愛知県からの強豪選手を含む選手・役員50人が参加して大いに盛り上がりました。 

▲ぎふ清流レクリエーションフェスティバルータスポニー大会
タスポニー誕生から40年、考案者である日本協会事務局長の山口さんはこれからの展開について、「今後は若い愛好者を増やすため、学校体育への普及を推進したいと考えています。また日本各地、さらにアジア諸国をはじめ、世界へ普及するべく、タスポニーの普及活動を精力的に展開していきたいですね」と意欲を燃やします。
みんなでワイワイと、ふわふわボールを追いかけて40年。“ふんわか”とした時の流れの中で、タスポニーを通じた人たちの輪がゆっくりだけど、着実に育まれつつあると山口さんは確かな手ごたえを感じています。新型コロナウイルスの蔓延など先行きに不透明さや不安感が増す昨今、名古屋発祥の愛嬌あふれるニュースポーツが、心身ともに疲れ果てている多くの人たちの心を癒し、笑顔や元気をいっぱい注入してほしいですね。
◎直近のタスポニー大会&行事予定
◎緊急告知!
MBS毎日放送『朝日奈央のキラめきスポーツ〜キラスポ〜』(MBS毎日放送)でタスポニーを紹介!
・放送日時:2月20日(日)深夜24:55〜25:25
・視聴可能地域:近畿広域圏
※放送後、動画無料配信サービス「Tver(ティーバー)」にて、全国で視聴可能です。ぜひ、ご覧ください!
<タスポニーに関するお問い合わせ>
日本タスポニー協会
〒464-0858 愛知県名古屋市千種区千種1丁目8番10号
アルゴジャパン株式会社内
Eメール:tasponyjapan@yahoo.co.jpHP: https://taspony.eei.jp