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エルスポ~フロアカーリング

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冬季オリンピックでお馴染みのカーリング。「氷上のチェス」と呼ばれる高いゲーム性や、日本女子チームの「もぐもぐタイム」のように、メンバー間のコミュニケーションも重要な競技的要素となる奥深さから人気が高まり、今やすっかりオリンピックのメジャー競技の一つになりました。
そんなカーリングを氷上ではなく、室内で楽しめるようにアレンジしたのが北海道新得町発祥のニュースポーツ、「フロアカーリング」です。
季節や天候に関係なく楽しめるフロアカーリング。老若男女・障がいの有無を問わず、誰でも気軽に参加できることが評価され、道内はもとより、全国的に競技人口が拡大しつつあります。今回はその誕生経緯やゲーム方法などを紹介しましょう。
<取材協力:新得町教育委員会社会教育課社会体育係>
 
 
 

1.フロアカーリングって、どんなスポーツ?

 
その名の通り、フロアカーリングはカーリングをもとに考案された室内ゲームです。木製の「ターゲット」と呼ばれる目標物を狙い、同じく木製でキャスターが付いた「フロッカー」を送球し、ターゲットに最も近づけることで得点を競います。
発祥地は北海道のほぼ中心に位置する十勝の表玄関で、“木材のまち”として知られている上川郡新得町(しんとくちょう)です。
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バドミントンコート縦半分の平坦で固い場所なら、どこでもプレーすることができるフロアカーリング。準備が簡単でルールも覚えやすいため、子どもから高齢者、身体に障がいのある人まで、みんなが一緒になって楽しめます。
また、フロッカーを送球する動作は腕だけでなく、体全体を使って押し出すように放つため、適度な全身運動になるのも健康面で注目される特徴でしょう。
そんなフロアカーリングが誕生したのは、今から28年前の1993(平成5)年のこと。新得町の体育指導委員が、同じ十勝圏の広尾町で発祥したカーリングに似た氷上スポーツ、「アイスストッカー」に刺激を受けたのがきっかけです。
「新得町にも新しいスポーツを!」と体育指導委員たちは立ち上がり、季節や天候に左右されない屋内競技の検討を開始。「誰でも楽しめるもの」「新得らしさを求めたニュースポーツ」をコンセプトに議論を重ね、やがてカーリングのストーンを木製のキャスター付き「フロッカー」にアレンジして、床に転がす競技を着想します。そして、カーリングの氷上に描かれたハウス(円)に相当するものとして「ターゲット」を発案し、フロッカーと同じく木製でキャスターを付けました。
こうして、カーリングを模した「フロアカーリング」が完成したのです。
カーリング同様に作戦を立てて楽しめるのはもちろん、的であるターゲットにもキャスターが付いているので、意図的にフロッカーをぶつけ、ターゲットを自分(あるいは自チーム)に有利な位置に動かすなど、オリジナルにはない面白さも盛り込んだのは特筆されるでしょう。
新得町では1999(平成11)年3月、町体育指導委員協議会が中心となって「日本フロアカーリング協会」を設立し、地元発のニュースポーツの普及活動を推進しています。現在、町内会や地域での交流会、学校行事のレクリエーションで楽しまれているほか、全道へ、そして全国へと広まっています。

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2. フロアカーリングの用具&コート、送球方法、ルール


木製のターゲットを的に、同じく木製でキャスター付きのフロッカーを送球し、得点を競うフロアカーリング。日本フロアカーリング協会では「子どもから高齢者まで誰でも一緒に楽しむ」ことを基本理念に掲げ、「選手一人ひとりがフェアプレーの精神を持ってゲームに臨む、罰則(ペナルティ)のないスポーツ」を謳っています。
どのような競技なのか、さっそくフロアカーリングの用具やルール、ゲーム方法などをみていきましょう。
 
用具~新得町の授産施設が開発・製造を担当
  
フロアカーリングをプレーするにあたって準備するものは、ターゲット1フロッカー8個または6簡易メジャーロープスコアシートです。
 
ターゲットの色はで、裏面にはキャスターが4つ付いています。
フロッカーの色はがあり、それぞれ4個ずつ、あるいは3個ずつ用意します。裏面にはキャスターが3つ付いています。
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ターゲットとフロッカーはともに重量2.3㎏、直径24㎝、厚み7.3㎝です。材質は、ぶつかり合ったときの衝撃音を心地よいものにしようとこだわり、「カバ」の集成材を使用しています。
これらの用具の開発・製作に携わっているのは、新得産の木材で家具などをオーダーメイドしている町の聴覚障がい者授産施設「わかふじ寮」(※最下段に連絡先記載)です。ターゲット・フロッカーに付けるキャスターについても、「床を傷つけず、滑りのよいものを」と試行錯誤を繰り返し、現在のものに決定したそうです。
 
簡易メジャーロープ
3~5m。ターゲットとフロッカーの距離判断が難しい場合に使用します。
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  スコアシート
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コート~大きさはバドミントンコートの縦半分ほど
  
 フロアカーリングのコートの大きさは、バドミントンコートの縦半分ほどです。公式で定めているコートのサイズは下の通り。体育館の床など、あらかじめラインが引かれている床なら、それを利用するのもOKです。
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◎ターゲット&フロッカーの送球方法~左右のカーブの使い分けもポイント!
   
ターゲットやフロッカーは、片ひざか両ひざを床面についた姿勢から、グリップを握って軽くスイングさせたのち、目標に向けて押し出します。
ターゲットやフロッカーは、滑走し、慣性が弱まると右か左に曲がるので、練習時にコツをつかんでおくとよいでしょう。
また、フロッカーのグリップを左右のどちらかにひねって送球すると、その方向に遠心力が働いてカーブします。右に曲がる(時計回転)のを「インターン」、左に曲がる(反時計回転)のを「アウトターン」と呼び、作戦によって使い分けます。

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基本ルール11から44まで、9点先取した方が勝ち!
   
フロアカーリングは1対1の個人戦から、2~4人ずつまでのチーム戦があります。後述する全国大会などでは、2対2のダブルスや4対4のフォースが正式種目になっています。
 
<フロアカーリングの種目>
・フォース(44)…フロッカー使用個数:8
・トリプル(33)…フロッカー使用個数:6
・ダブルス(22)…フロッカー使用個数:8個もしくは6
・シングルス(11)…フロッカー使用個数:8個もしくは6
 
<ゲームの進め方 ※例:チーム戦>
まず、両チームのキャプテンによるじゃんけんで先攻・後攻を決めます。先攻権はセットごとに移動します。
 
先攻・後攻が決まったら、まず先攻チームが緑色のターゲットをグリーンゾーンに送球します。
グリーンゾーン内に停止しない場合(オンラインは有効)、もう1回だけ送球をやり直すことができますが、2回目も無効となったら、相手チームにターゲットの送球権が移ります。ただし、先攻権は移動しません。
 
ターゲットがグリーンゾーン内に静止したら、審判の指示で先攻チームが赤色のフロッカーを送球します。
フロッカーがコート外に出た場合は、2投目を後攻チームが黄色のフロッカーで送球し、それもコート外に出たら3投目は先攻チームが送球します。
 
先攻チームが投了したら、次に後攻チームが先攻チームの赤色フロッカーよりターゲット近くに停止するよう、黄色のフロッカーを送球します。その際、後攻チームが送球した黄フロッカーが先攻チームの赤フロッカーに当たり、共にコート外へ出た場合は、次の送球を“2つのフロッカーを出した後攻チーム”が行います。
また、セット途中でターゲットを残し、先攻または後攻チームが送球したフロッカーにより、コート内の先攻・後攻両チームのすべてのフロッカーがはじき出された場合も、送球した(出した)チームが次の送球を行います。
 
この後は先攻・後攻に関係なく、ターゲットから遠いフロッカーのチームが、近いチームを逆転するまで連続して送球します。
下図だと、先攻したAチームより後攻のBチームのフロッカーの方が遠いため、次はBチームが送球します。BチームAチームよりフロッカーをターゲットに近づける(逆転する)まで、連続して送球します。
なお、同距離になった場合も「逆転」ではないため、続けて送球することになります。
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Bチームの2投目のフロッカーが、Aチームのフロッカーよりターゲットに近づけたら「逆転」となり、次の送球はAチームに移ります。Bチーム2投目のフロッカーよりターゲットに近づくことができるまで、連続してAチームが送球します。
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ターゲットから遠い劣勢のチームが、フロッカーすべてを送球しても逆転できなかった場合、優勢なチームが残りのフロッカーを送球し、そのセットは終了します。

得点は、フロッカーをターゲットに最も近づけたチームに与えられます。点数はフロッカー1個につき1点で、相手チームのターゲットに最も近いフロッカーより内側にある、自チームすべてのフロッカーの個数がそのまま得点となります。
例えば下図の場合、このセットはBチームの1点獲得になります。
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引き続き、次のセットを開始します。先攻・後攻を入れ替え、フロッカーも交換します。

勝敗は9点先取したチームの勝ちです。しかし、最近は1試合4セットで対戦するのが主流になっており、最終セットで同点の場合、延長戦1セットを行い、勝敗を決します。
なお、合計得点やセット数などは、大会の規模や運営上の理由等によって変更もできます。 

 
<勝敗と得点について>

 ●送球したフロッカーがターゲットに当たり、コート外に出たら、そのセットは終了となります。ターゲットをはじき出したチームは、相手チームに「2点」、または相手チームの「未送球フロッカー数」いずれか多い方を得点として与えます
 ターゲットをレッドゾーンに弾き飛ばした場合も同様にセットは終了します。

 ●送球したAフロッカーが別のBフロッカーを弾き、そのBフロッカーによってさらにターゲットがコート外にはじき出された場合、「Aフロッカーがターゲットを出した」とみなし、Bフロッカーのチームに「2点」、または相手チームの「未送球フロッカー数」いずれか多い方を得点として与えます

 ●
A・B両チームとも、ターゲットに最も近いフロッカーが同距離の場合は、それぞれ1点ずつ与えられます。また、例えばBチームの2個とAチームの1個が同距離の場合も、いずれか一方が優位と認められないので、それぞれ1点ずつとなります。

 <判定について>

 ●ターゲット及びフロッカーがオンラインのときは、コート内とみなします。

 ●
送球したターゲット及びフロッカーが、いったんコートに出たものの、再びコート内にもどり、停止した場合は有効となります。

 ●
送球したAフロッカーにより、コート内のBフロッカーが外に弾き出された場合、弾き出されたBフロッカーは無効となります。Aフロッカーはコート内に残れば有効、外に出れば無効となります。

 
以上がフロアカーリングの基本的なルールと規則です。このほかにも、新得町のホームページにはフロアカーリングのより詳しいルール解説や、本サイトでは触れない「審判の義務と権限」、「競技上・審判上の注意」などの規定が掲載されています。関心のある方はぜひ、新得町HP(URL: https://www.shintoku-town.jp/kyouiku/floor_curling/)をご覧ください。
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3. 広がるフロアカーリング

 
一見単純そうにみえて、あらゆるケースを想定し、明確にルールを定めているフロアカーリング。けっこう内容の濃い、頭の使うスポーツであることがおわかりなのでは? フロッカーが点在する床の状況をみてチームで作戦を練り、ゲームメイクする楽しさはまさにカーリングそのもの。子どもや高齢者より、むしろ若者の方がはまりそうですね。現在、日本フロアカーリング協会に登録する団体は下の表の通りです。
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 「フロアカーリングをやってみたいけど、知っている人が身近にいなくて困っている」といった人たちのために、日本フロアカーリング協会では講師の「派遣指導」を行っています。依頼があれば、全国各地へ講師を派遣する方針を掲げており、これまでに十勝管内はもちろん、札幌市・釧路市・留萌市などの全道、また埼玉県羽生市などへ講師が派遣されました。費用等の詳細は下記の通りです。
なお、現在は新型コロナウイルスの影響もあるため、実際に依頼を受けた場合は依頼者と協議のうえ、決定しているそうです。
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 全国の愛好者が一斉に集い、楽しむ大会としては、新得町や日本フロアカーリング協会などの主催で、毎年秋に「全国フロアカーリング交流大会」が開催されています。
 氷上で競う本家のカーリングより一足早い、秋にシーズンの佳境を迎えるフロアカーリング。毎回全国各地から、多くのチームが会場の新得町総合体育館に駆けつけるそうです。
 ちなみに全国大会は新得町以外でも、埼玉県羽生市が日本フロアカーリング協会の公認を得て開催しています(主催は羽生市教育委員会、羽生市スポーツ推進委員会)

 令和元年度に行われた第20回大会では、93チーム・262人(ダブルス60チーム、フォース33チーム)が参加し、熱戦を繰り広げました。 
昨年の第21回大会については新型コロナ禍で中止となり、今年9月に予定していた第22回大会もコロナの全国的な感染急拡大を受け、先ごろ中止決定が余儀なくされました。

 第22回大会については、つい先月まで着々と準備を進めていたという新得町教育委員会。恒例行事の再開で、2年ぶりの歓声を町いっぱいに響かせようと張り切っていただけに、メンバーの落胆も大きかったようです。でも、早々に気持ちを切り替え、来年以降の大会再開を見据えていると同町教育委員会の担当者は語ります。

 「令和2年度に引き続き、令和3年度もコロナの影響で大会を中止という決定となりました。中止決定にあたり、『開催したい』という思いと、『参加者の安全を確保できるか』という思いが交錯しましたが、やはり安全を最優先にして、中止とさせていただきました。来年度こそは、競技者のいきいきとしたプレーと笑顔が見られればという思いを持ちながら、今年度は小規模ながら普及活動を頑張っていきたいと考えております」(担当者談)
 新型コロナが一刻も早く収束して、いつもの日常を取り戻すのはみんなの願い。来年こそ、久々に全国フロアカーリング交流大会が新得町で再開され、元気いっぱいの熱気と歓声が全道はもちろん、本州・四国・九州にも届いて、日本全国を明るくしてほしいですね。 


  ◎令和元年の第20回大会の様子
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<フロアカーリングのお問い合わせ>
新得町教育委員会社会教育課社会体育係
(日本フロアカーリング協会)
 〒081-0014 北海道上川郡新得町4条南4丁目9番地
TEL:0156-64-0532/FAX:0156-64-5880
Eメール:taiiku@town.shintoku.hokkaido.jp
 
 
<用具に関するお問い合わせ>
社会福祉法人厚生協会わかふじ寮
 〒081-0023 北海道上川郡新得町3条北1丁目5番地
TEL:0156-64-5001/FAX:0156-64-5522
 
 
  

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