今月の健康記念日
- 2021/08/19
- 12:40
今年から8月29日は「馬肉を愛する日」です。長野県の馬肉加工・販売会社(株)若丸が(一社)日本記念日協会に申請し、5月に認定・登録されました。
別名「桜肉」とも呼ばれ、刺身にすれば食卓に華やかな彩りを添える馬肉は、低脂肪・低カロリーなのに高タンパク質なヘルシー食材で、ビタミン、ミネラル、鉄分、カルシウムなどの栄養素も豊富。そのうえ、スタミナ増強や疲労回復を促進するグリコーゲン、美容効果のあるアミノ酸のペプチドを多く含むことからアスリートやモデルも好んで食べており、近年注目を浴びています。
今回は馬肉が食べられるようになった歴史や、馬肉が「桜肉」(さくらにく)と呼ばれるワケ、馬肉の効能などを紹介しましょう。
🕊馬はもともと食糧として狩りの対象だった!?
古くから人の移動や荷物の搬送、荒地の開拓、農地の耕作などで活用されてきた馬。私たちの生活に欠かせない“相棒”として、長く人類の発展に尽くしてくれました。でも、遙か太古まで遡ると馬もまた、鹿や猪と同じ食糧として狩猟の対象でした。その馬が家畜化されはじめたのが5000年前のこと。日本には縄文時代の2000年前、モンゴルからもたらされたそうです。
やがて馬は食用から、農耕・搬送・牽引などの力仕事を任せる役畜となり、さらに狩猟の足や戦場での騎馬へと活躍の場が広がっていきましたが、食用に関して日本では、仏教伝来とともに倦厭されるようになります。そして、仏教を国教に定めた大和政権の時代になると、天武天皇が牛・馬・犬・猿・鶏を食すことを禁じる肉食禁止令を国内で初めて発布(675年)。その後、奈良時代でも元明天皇と聖武天皇が禁令を発し、貴族の間では肉食を忌避する意識が浸透していきました。
このような風潮の中で馬肉が食べられるようになったのは、熊本城の築城で有名な戦国武将・加藤清正に起源があるという説が有力です。
今から400年ほど前、豊臣秀吉による朝鮮出兵(文禄・慶長の役:1592~98年)で清正たちの軍勢が大陸に渡った際、現地で食糧が尽き、やむなく軍馬を食べたのが発端でした。清正たちは帰国後も好んで馬の肉を食べたことから、馬肉文化が領内の熊本で根付き、やがて全国に広まっていったというのです。
現在でも全国一位の馬肉生産・消費量を誇る熊本県。“馬肉先進県”の地位を揺るぎないものにしていますが、長野県や福島県、青森県などでも馬肉は身近な食材として親しまれています。
🕊なんで馬肉は「桜肉」と呼ばれるの?
近年の「ジビエ」ブームもあり、「さくら」「ぼたん」「もみじ」といった呼び名もご存知の方が多いのでは?「さくら」は馬肉、「ぼたん」は猪肉、「もみじ」は鹿肉の別名です。
今回は「さくら」こと、馬肉が「桜肉(さくらにく)」と呼ばれる理由に注目しましょう。その由来は下の通り諸説あります。
ちなみに馬肉には「桜肉」のほか、「蹴とばし」という俗称もあるそうです。そのワケは……説明しなくてもおわかりですね。
その理由は馬が他の肉とは違い、O-157などの「腸管出血性大腸菌」のリスクが少ないことが挙げられます。馬は牛のように一度胃に入った食べ物を再び口に戻して咀嚼する反芻(はんすう)動物ではないことに加え、他の動物と比べて体温が高いことから、O-157などの菌が発生し生息するリスクが非常に低いのです。
ほかにも、家畜の伝染病の一つである「口蹄疫(こうていえき)」は、牛や豚などヒヅメが2つに割れた偶蹄類(ぐうているい)のみに感染し、馬のようにヒヅメが割れていない奇蹄類(きているい)には感染しないことも、生食が認められている理由の一つになっています。


しかし、いくら馬肉を生で食べて大丈夫といっても、食中毒の心配がまったくないわけではありません。馬刺しを購入する際は、品質管理を徹底している企業の製品や、信頼できる専門店・ネットショップで購入するようにしましょう。
🕊湿布にもなる!? 馬肉の驚きの効能
口の中に入れると、とろけるような食感と芳香な香り、独特の甘みを楽しめる馬刺し。刺身以外にも鍋や焼き物、寿司、サラダ、パスタの具など多彩な料理を楽しめる馬肉は、今や人気の美味しい健康食材となりました。
脂肪分は牛肉の5分の1ほど、カロリーも約半分と、低脂肪・低カロリーでコレステロールが少ないのに、タンパク質は2倍以上と高タンパク質な馬肉。ビタミン、カルシウム、ミネラルなど栄養価が高く、鉄分もヒジキやホウレンソウより豊富なため、女性に多い貧血の予防に最適です。
このほかにも、馬の生肉や脂肪は体を冷やす効果があり、ヤケドや打撲などの患部にあてると早く治るといわれています。例えば日本プロ野球史上の伝説的ピッチャー、巨人軍の沢村栄治が連投で肩を痛めた際、当時の藤本定義監督が馬肉を肩にあてさせたというエピソードが伝わっています。
ちなみに、かつての福岡ダイエーホークスの王貞治監督も秋山幸二選手が足を打撲したとき、患部の湿布用に馬肉を贈ったそうです。でも、秋山選手はそうとは知らず、滋養強壮をつけようと、その馬肉を食べてしまったという笑い話もあるとか。秋山選手は熊本県出身。納得ですね。

美味しくてヘルシーな馬肉。馬に感謝と“愛”を感じながら味わって、夏の疲れをリセットしましょう!
参考:熊本馬刺しドットコム、くまもと通販協同組合、大阪馬肉屋HP、あおもり産品情報サイト「青森のうまいものたち」、農林水産省「うちの郷土料理」、Wikipedia等