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今月の健康記念日

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 4月20日は「ジャムの日」です。
 1910(明治43)のこの日、長野県出身で、日本のジャム産業の礎となる技術を確立した塩川伊一郎氏が、皇室にイチゴジャムを献上しました。この出来事にちなみ、日本ジャム工業組合が4月20日を記念日として(一社)日本記念日協会に申請し、2016年9月に認定・登録されました。
 季節の果実を少しでも長く味わうための保存食として発達してきたジャム。今回はそのうんちくと健康効果を紹介しましょう。



 🕊漬け物と同じ?! 保存食として愛用されてきたジャム

 ジャムは果物に砂糖などを加え、加熱濃縮してゼリー化したものです。具体的には、「砂糖が果物などの水分を抱え込んでその腐敗を遅らせる性質や、果実・果汁に含まれているペクチンに糖類と酸が作用して、ゼリー状に柔らかく固まる働きを利用した、保存可能の嗜好品」と定義できるでしょう。原料の果物によっては保有する酸味が弱かったり、ペクチンが少なかったりするので、天然の酸やペクチンを加えて補正し、バランスを整えながら仕上げていきます。
 一般的にジャム類は、ジャム、マーマレード、ゼリーの3種類に分けられ、いずれもその保存性と素材の風味や色、香りを生かした身近な食品として世界中で愛されています。特にヨーロッパでは日本の漬け物のように、昔からその地域の風土にあったジャムが生まれ、保存食として愛用されてきました。なかでもパンのおいしいイギリスとフランスはジャムが発達し、「ジャム先進国」と称されています。パンとジャムの親密な関係を改めて感じさせますね。
 ちなみに“JAM(ジャム)”を辞書でひくと、「押しつぶす」「詰め込む」などと訳されており、その語源はすでに使われなくなった「グチャグチャかむ」という意味の“CHAM”だとされています。このことから、ジャムが「よく咀嚼された消化のよい食品」として、古くから人々に認められていたことが窺えます。
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 🕊いまや欧米を凌駕、日本ジャムの歴史

 ジャムの歴史は有史以前までさかのぼりますが、日本に伝来したのは16世紀後半で、宣教師によってもたらされました。ときは戦国の世、もしかしたら南蛮風を好んだ織田信長も口にしたかもしれませんね。
 日本で初めてジャムがつくられたのは、さらに時代が下り明治時代になってからのこと。1877(明治10)年、東京・新宿にあった勧農局がイチゴジャムをつくり、試売したそうです。なお、この年は西郷隆盛率いる鹿児島士族の反乱・西南戦争が起こり、ジャムの普及発達に欠かせないパンが軍用食として登場しました。
 民間によるジャムの生産は1881(明治14)年に始まり、長野県で缶詰のイチゴジャムがつくられました。以来、長野県はジャムづくりが盛んになります。
 大正時代に入るとパンとジャムが国民の間に普及していき、夏目漱石の『吾輩は猫である』でも、苦沙弥(くしゃみ)先生の「俺は、ジャムは毎日舐めるが……」といったセリフがみられます。
 昭和時代には、戦後の食糧事情で学校給食にパンが導入され、学童がパンとともにジャムも親しんで成長していきます。一方、高度経済成長で国民が豊かになると健康志向も高まり、塩分や糖分の多い食品は敬遠されるようになりました。その波はジャムにも及び、メーカー各社は砂糖を減らした低糖度ジャムの開発に取り組み始めます。
 しかし、一定量の砂糖とバランスのとれていたジャムの風味から砂糖を減らし、美味しいジャムをつくるのは大変な冒険。また、砂糖を減らした低糖度ジャムの場合、保存性を加えたり、着色料で色を付けないと常温流通が難しい問題がありました。
 そうした難題に日本のジャムメーカーはチャレンジし、「ジャムの美味しさは甘さではなくフルーツの量」という観点から新しいジャムをデザイン、糖度を40度まで下げることに成功しました。ちなみにアメリカのジャムのスタンダートは糖度65度以上、ヨーロッパは60度以上。日本は1988(昭和63)年にJAS法を改正して40度以上をジャムとしています。いまや日本のジャムは、先輩である欧米のジャムを追い越したといえるでしょう。
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 🕊種類も用途もさまざま、ジャムで健康な春を

 最近は低糖度ジャム以外にも、低カロリージャム、虫歯になりにくいジャムなど、健康面に配慮したさまざまなジャムが開発されるようになりました。
 また、原料もイチゴ、リンゴ、オレンジ(マーマレード)、ブルーベリーといった定番に加え、世界の珍しいフルーツ(パッションフルーツ等)、野菜(カボチャ、ニンジン等)、花弁(バラ、スミレ等)などバラエティに富んだ商品がつくられており、専門店では30~40種類をそろえているところもあるそうです。
 ジャムの健康効果は、やはり原料と成分に依るところが大きいのはいうまでもありません。ジャムの原料として代表的なイチゴ、リンゴ、柑橘類(オレンジ等)と、ジャムに欠かせない成分であるペクチン、砂糖の特徴や効能・効果は下の通りです。
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 以上のように、ジャムは私たちの健康に大いに役立っています。
 ジャムの用途も、ヨーグルトやアイスクリームにかけたり、料理のソースや隠し味として使用したりと多様化してきました。そういえばロシアの人は、独特の煮出した紅茶の中へジャムを入れて飲む「ジャムティー」の習慣がありますね。ジャムを味わう工夫をさまざまに凝らして、春の陽気を健康的に過ごしましょう。

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資料提供協力:日本ジャム工業組合
 

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