エルスポ~桶ット卓球
- 2021/02/25
- 12:00
寒いシーズンになると恋しくなる温泉。冷えた体を芯から温め、心もポカポカにしてくれます。そして、温泉に入ったあとの遊びといえば、やっぱり卓球! 温泉といえば卓球、卓球といえば温泉! 多くの人がそう思うのではないでしょうか。
全国の各温泉地では、さまざまなアイテムをラケット代わりに使うユニークな“ご当地卓球”を考案し、町興しにつなげています。今回はその中で、風呂桶をラケットやネットに使う兵庫県丹波篠山市発祥の「桶(オケ)ット卓球」を紹介しましょう。
<取材協力:丹波篠山市 市民生活部地域コミュニティ課>
1.桶ット卓球って、どんなスポーツ?
風呂桶をラケットやネットの代わりに使う「桶ット卓球」。その誕生は、今からちょうど10年前の2011(平成23)年にさかのぼります。地域の温泉施設「こんだ薬師温泉ぬくもりの郷」(丹波篠山市今田町、以下「ぬくもりの郷」※最下段に紹介コラムあり)の利用を促進しようと、市の公民館職員が考案しました。そして、2012(平成24)年2月に同温泉施設で初めて「全国桶ット卓球大会」を開催。非常な盛り上がりをみせ、以降、毎年2月初旬に開催される桶ット卓球の全国大会が「ぬくもりの郷」の恒例行事になっています。
見た目のインパクトもさることながら、どこか滑稽で親しみを感じさせる桶ット卓球。ラケットに使う桶を「桶(オケ)ット」、ネットに使う桶を「桶(オケ)ネット」とそれぞれ呼びます。
タマを打ち返すときに響く木桶の「ポコン、ポコン」といった打球音の心地よさや、桶の面も大きい(ルールでは「直径30センチ以下」と規定)ので、初心者でもすぐにラリーを楽しめる簡単さが桶ット卓球の特徴であり、最大の魅力といえるでしょう。
ほかにも、サーブ時に発する「あ~湯(YOU)~桶(OK)?」「桶(OK)!」といった掛け合いや、参加選手たちの奇抜な仮装なども話題を呼び、全国大会には毎回、全国各地から多くの参加者が丹波篠山市に駆けつけ、熱い温泉に負けない熱戦を繰り広げています。
2. 桶ット卓球で使う用具、基本&試合ルール
◎用具~桶は木製で直径30センチ以下、ラージボールを使用
桶ット卓球で準備する用具は、ラケットやネットで使う風呂桶のほか、卓球台、そして卓球のラージボールです。
風呂桶は直径30センチ以下の木製桶(加工不可)という規定があり、全国大会では会場の「ぬくもりの郷」で販売している木桶(直径約22.5cm、高さ約11cmの木桶)が使用されています。なお、この木桶をネット用(桶ネット)に7個並べれば、ちょうど卓球台の幅に合います。
卓球台は大きなテーブルでも代用可です。ネットとして中央に置く桶ネットは、裏表交互にして並べます。
ラージボールは、卓球の公式ボールが直径40ミリなのに対し、44ミリのサイズになっています。生涯スポーツ用に開発されたため安全性が高く、打球のスピードもあまり出ないので、初心者や幼児、高齢者でもラリーが続けやすいのが特徴です。
◎基本ルール~2人1組のダブルスで対戦!
◇ ルールは基本的に卓球と同じですが、必ず2人1組のペアで行います。つまり、桶ット卓球はダブルス競技です。
◇ 桶ットの持ち方は自由で、どの面で打ってもOK。ただし、必ず両手で持って打たなければなりません。片手打ちは相手のポイントになります。
◇ ドリブル(打つときにボールが複数回桶ットに触れる)やキャリー(打つときにボールを桶ットに乗せて運ぶ)も相手のポイントになります。
◇ サーブは、味方パートナーがトスした球を直接打ち、自コートにバウンドをさせてから、相手コートに入れます。ただし、相手対角コートに入れる必要はありません。
◇ サーブは2本交代とし、サーブ側はトス・サーブを1本ずつ、それぞれ交代して行います。
◇ サーブの際、味方にボールをトスする人は「あ~湯(YOU)~桶(OK)?」といい、打つ人は「桶(OK)!」といってから打ちます。この掛け合いがなければ失点となります。
◇ サーブのトスする人は、自コートの卓球台側面から打つ人にボールをトスしてもOK。ちなみにラリー時も、卓球台側面から打ち返すのはインプレー(桶ット卓球では「桶ットイン」)となります。
◇ レシーブは交互に行う必要はなく自由。選手の位置も自由です。
◇ 桶ネットにバウンドしたあと、相手コートに入ったときは「桶ットイン」となります。複数回のバウンド後でも「桶ットイン」です。
◇ 打ったボールが桶ネット内で止まった場合は失点となりますが、即座に「桶ット!」と叫んだらノーカウントになります。ただし、このルールが適用されるのはラリー時のみで、サーブで打ったボールが桶ネットに止まった場合はアウト。
◇ 相手の返球が自コートにバウンドせず、直接構えた桶ットに当たった場合は失点となります。なので、アウトボールでも注意が必要。ちなみにボールが桶ットではなく、体に直接当たったら、相手側の失点です。
◇ 返球が障害物(天井・壁など)に当たった場合、相手コートにインしても失点となります。
◎試合ルール~1ゲーム11ポイント制、3ゲームマッチ
◇ 試合は3ゲームマッチで、2ゲーム先取したペアの勝利です。
◇ サーブorコートの選択は、ジャンケンやコイントスなどで決めます。
◇ 1ゲーム11ポイント制。双方ペアの得点がともに10点の場合はデュースとなり、2点先取したペアの勝利となります。
◇ ルールの説明で触れた通り、サービスは1人1本ずつの2本で相手ペアへサービス交代しますが、デュース時は1本ごとにサービスを交代しなければなりません。
3. 世界大会も開催! 広がる桶ット卓球
桶ット卓球の用具や基本&試合ルール、いかがでしたか? 木桶の用意は難しいかもしれませんが、100均のプラ桶を代用するなど工夫次第で、地域や職場、学校などのレクリエーションとして気軽に楽しめそうですね。
丹波篠山市での桶ット卓球大会の近況に触れると、一昨年2月2日に第8回全国大会が「ぬくもりの郷」で催されました。
全国大会の競技部門は「男性ペア部門」「女性ペア部門」「男女ペア部門」の3つあり、参加資格は特になし。年齢不問でだれでもOKです。ただし定員は72ペアで、先着順になっています。優勝ペアには桶の上に立つ「フロのビーナス」が贈呈され、ほかにも「パフォーマンス賞」「コスプレ賞」などがあります。
第8回大会も例年同様、全国から集まった選手がそれぞれ思い思いの衣装を身に着け、にぎやかに桶ット卓球を楽しんだそうです。
また、昨年は市名変更(2019年5月1日に「篠山市」から「丹波篠山市」に変更)とオリンピックイヤーを記念して、「ぬくもりの郷」での全国大会は一旦休止し、「桶ット卓球世界大会in丹波篠山」を2月15日に丹波篠山市主催で開催されました。
会場は市内の「四季の森生涯学習センター」(丹波篠山市網掛)で、当日は日本人ペアの59組のほか、外国籍、あるいは国外にルーツのある米国や南アフリカ、タイ、ベトナム、インドネシアなどのペア32組(計91組)が出場。ポコポコといった木製の軽快な打球音が響く中、さまざまな言葉の歓声が飛び交い、参加選手たちは交流を深め合ったそうです。ちなみに、初代世界王者には日本人の親子ペアが輝きました。
なお、昨年は7月4日に全国のご当地温泉卓球が一堂に会し、それぞれのアイテムで一つの球を打ち合う「ご当地温泉卓球全国大会」の第8回大会が「ぬくもりの郷」で開催されることになっていましたが、新型コロナウイルスの感染防止のため延期となりました。
今年2月に予定されていた恒例の第9回全国大会もコロナ禍で中止となりましたが、「地元の桶ット卓球愛好家の方々は、今も日々練習を重ねています」と市の担当者は語ります。「また近い将来に大会を開催した際は、多くの皆様のご参加をお待ちしています」と同担当者。桶ットの心地よい響きや愛好者たちのにぎやかな歓声が、再び丹波篠山市にあふれる日が待ち遠しいですね。
<桶ット卓球のお問い合わせ>
丹波篠山市地域市民生活部地域コミュニティ課(城東公民館)
〒669-2441 兵庫県丹波篠山市日置385-1
電 話 079-556-3171
FAX 079-556-3914