今月の健康記念日
- 2020/09/03
- 12:00

今日は9月3日、「クエン酸の日」です。レモン果汁を創業商品とするポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)が、酸っぱい成分で健康にいいクエン酸に注目してもらおうとクエン(9)・サン(3)の語呂合わせで制定し、2006年、(一社)日本記念日協会によって認定・登録されました。
日常生活や運動後の疲労回復に効果を発揮するクエン酸。梅やレモンなどの柑橘類に多く含まれており、古来健康食として利用されてきました。猛暑が過ぎ、夏バテで疲れが出やすくなるこの時期にこそとっておきたい酸味。クエン酸の歴史や効果、多く含む食べ物などを紹介しましょう。
🕊人間のエネルギーをつくり出すクエン酸サイクル
レモンや梅干し、お酢などの酸っぱいものに多く含まれているクエン酸。爽快感のあるこの酸味成分は、古くからカラダに良いことが知られていました。たとえば、古代ギリシャでは医者のヒポクラテスがお酢の力に注目し、さまざまな治療で活用していた記録が残っています。中国でも周の時代には、お酢の効能が広く認められ、漢方薬として扱われていたそうです。
そのクエン酸が発見されたのは1784年のこと。スウェーデンの科学者C.W.シェーレが、レモン果汁からクエン酸を分離することに成功しました。そして、1937年にイギリスの生化学者H.A.クレブスが、人間のエネルギーをつくり出す仕組み「クエン酸サイクル」(クエン酸回路)を解明。この功績により、クレブス博士は1953年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。
クエン酸サイクルの概要は下の図の通り。まず、食事で摂取した三大栄要素、炭水化物、脂質、タンパク質がさまざまな過程を経て分解され、アセチル-CoA(活性酢酸)になります。この活性酢酸とオキサロ酢酸が結合してクエン酸になり、順にアコニット酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酸と姿を変え、再びアセチル-CoAと結合してクエン酸に戻る──これがクエン酸サイクルです。
酸が変化していく各段階では、それぞれ燃焼が起き、炭酸ガスと水、熱を発生します。炭酸ガスと水は呼吸や発汗で排泄され、熱はATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー貯蔵物質に変わります。このATPこそ、カラダを動かしたり、呼吸をしたり、内臓を働かせるなど、人間の生命活動に欠かせないエネルギーなのです。
🕊クエン酸の補給が疲労を回復させるワケ
人間のエネルギー、ATPをつくり出すクエン酸サイクル。でも、きちんと流れないと、ピルビン酸(生物の体内に広く存在する有機酸の一種。代謝における重要な中間生成物)が肩こりや筋肉疲労の元凶となる乳酸に変わり、カラダの不調を招いてしまいます。
そうした場合、クエン酸を直接補給するとクエン酸サイクルが活発になります。すると乳酸もピルビン酸に変わり、アセチル-CoA→クエン酸と経てクエン酸サイクルに取り込まれ、燃焼するので疲労が回復します。このようにクエン酸サイクルを潤滑に回すもっとも簡単な方法が、直接クエン酸を補給することなのです。
クエン酸を含む酸っぱい食べ物としては、おにぎりの具の定番、梅干しを思い浮かべる人が多いのでは? 昔から梅は健康に欠かせない食べ物で、「梅はその日の難逃れ」といわれたりしました。疲れが出やすいこの時期こそ、日本の伝統的な酸味を改めて味わってみましょう。
一方、果物だとレモンやオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類のほか、いちご、キウイなどがあります。ちなみにレモンには、梅の約2倍、グレープフルーツの約3倍のクエン酸が含まれているそうです。スポーツ選手のようにレモンのハチミツ漬けをかじったり、レモンのしぼり汁にハチミツを入れ、冷たい水でジュースにして飲んだりなど、手軽な方法でレモンをとるようにしましょう。
お酢にもたくさんのクエン酸が含まれており、種類も黒酢、もろみ酢、穀物酢、リンゴ酢、白ワインビネガーなど豊富です。原料や製法によって、酸味や風味が大きく異なるお酢。それぞれの特性を生かし、夏バテ防止メニューを工夫するのも楽しそうですね。
クエン酸の効果は、クエン酸サイクルの要としてATPを生成し、疲労を取り去る以外にも、①ミネラルの吸収促進、②新陳代謝の活発化、③酸味による食欲増進、⑤肝臓病の改善――などが挙げられます。上手にクエン酸をとって、元気にメリハリのある生活を送りましょう! 
取材:ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)
参考:(一社)日本クエン酸サイクル研究会「クエン酸サイクル」、(株)つかれ酢本舗「クエン酸について」、(株)アリスト「クエン酸サイクル(クエン酸回路)とは?」、総合南東北病院「南東北 第179号」、Wikipediaほか