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エルスポ~公式ワナゲ

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 縁日でお馴染の輪投げ。誰もが一度は楽しんだことがあるのでは? そんな輪投げが従来の楽しさを維持しつつ、長寿社会にマッチした対話型ゲームとして各地で親しまれています。その名は「公式ワナゲ」。戦後まもなく誕生した、意外と古い生涯スポーツです。
「一期の原則」「和の原則」といった思想が込められたルールなど、単純そうで奥深い公式ワナゲは健康づくり、仲間づくりに最適。今回はその歴史や楽しみ方、魅力などを紹介します。
<取材協力:日本ワナゲ協会、千葉市生浜公式ワナゲ協会>
 

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 1. 歴史ある公式ワナゲ、その誕生と普及状況

 
単なる遊びを生涯スポーツに再生!
公式ワナゲの誕生は戦後まもなくのこと。単なる遊びから、独自のルールや道具を整備し、スポーツとして再生させたのは、当時大阪府立大学で教壇に立っていた青木泰三教授です。公式ワナゲは青木教授によって、その原型が形づくられていきました。
当初、投げる輪はロープを使用していましたが、均質性やゲーム性を考慮して現在のゴム製のものを開発。目標となる台の形状も正方形にし、台上の数字が縦・横・斜のいずれの和(合計)も15となる配列を施しました。これを15(いちご)、すなわち「一期」と呼び、「一期の原則」(詳細は後述)と定めました。
この原則は、日本ワナゲ協会が掲げる理念「輪で話と和を」の精神(公式ワナゲ<輪>を楽しみ、そのことを話題として会<話>を楽しみ、みんなが仲よく<和>みましょう)とともに協会の指針となっており、会員はこの心を拠り所に活動しています。
 
公式ワナゲの奥深さを感じる公式統一ルール
1967年4月、青木教授が主宰する簡易スポーツ研究会(「いつでも、だれでも、どこでもできる」スポーツを考案し、用具の開発・改良、ルールの策定を行う会)の基礎メンバーを中心に「日本ワナゲ協会」が設立されました。
そして、初代会長の任に就いた青木教授の指導により、ワナゲ研究普及機関として活動を開始。1967年、77年、94年のルール改定を経て、2001年10月の理事会で「一期の原則」等の全面採用が正式に決定し、02年4月から統一公式ルールとして実施しました。
背景には、公式ワナゲの普及とともに地域間の交流が盛んとなり、愛好者から統一公式ルールを望む声が高まったことや、「生涯スポーツへの進化と、本来のより楽しい対話型ゲームとしてのさらなる推進が、長寿社会の今日こそ必要」との認識も一段と強くなったことなどが挙げられます。「一期の原則」をはじめとする公式ワナゲの統一公式ルールは次の通りです。
 
「一期の原則」……通常、棒に入った点数の合計が総得点になるが、縦・横・斜いずれか一列に入った場合、通常15点のところ2倍の得点「30点」とする。
「負け後攻の原則」……ジャンケンで勝てば先攻で、負ければ後攻。第2セット(ゲームは3セット行う)以降は前セットで負けた方が後攻になる。
公式ワナゲでは、投輪距離2に定めている。これにより、誰もができるスポーツゆえに身体的、年齢的に有利・不利とならないよう以下の3点を定めている。
「投輪ルール123
①ライン(投輪ライン)を踏まない。
②両足を床につけて投輪する。ただし、かかとを浮かせてもよい。
③投げた輪が静止するまで投輪ラインを越えたり、次の輪を投げない。
「和の原則」……上記の規定通り投輪して同点の場合は引き分け。
*ただし、大会運営上勝負が必要な場合は「一投勝ち」で決める。
 
公式ワナゲの会員数、傘下組織は?
現在、日本ワナゲ協会会長は川島正英さん(NPOスローライフ・ジャパン理事長/東京都)が務め、普及振興に努めています。
直近の会員数は2018年3月末時点で7,785人。最年長は98歳、最年少は11歳です(男女比の構成比は統計をとっていないため不明)。なお、日本ワナゲ協会会員は、「普及員資格を取得した者を会員と認める」と定義しています。
日本ワナゲ協会の支部は次の通り。山形県の会員数が突出して多いのは、山形県老人クラブ連合会が県内市町村の老人クラブに公式ワナゲを推奨し、県老連と日本ワナゲ協会が連携した普及を促進したことによります。その後、2006年4月20日に山形県公式ワナゲ協会が誕生し、翌年10月24日に第1回公式ワナゲ全国交流大会が上山市で行われました。こうした経緯から、毎年山形県で公式ワナゲの全国交流大会が開催されています。
 
山形県公式ワナゲ協会 設立:2006年4月20日/会員数:3,659人
伊佐市公式ワナゲ協会(鹿児島県) 設立:2012年2月25日/会員数:81人
千葉市生浜公式ワナゲ協会(千葉県) 設立:2016年2月25日/会員数:22人
福井県公式ワナゲ協会 設立:2019年1月25日/会員数:75人
 
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 2.公式ワナゲの用具、コート、投げ方、ルール

 
公式ワナゲの用具
<台(ワナゲ台)>
木製60㎝×60㎝の白地の台で、上段左より4・9・2、中段左より3・5・7、下段左より8・1・6の数字が茶色で記されています。
各数字の上には得点棒を固定し、台裏には傾斜をつけるための脚2本がついています。ちなみに傾斜角度は20°(±1°)。
<輪>
赤色4本・黄色4本・青色1本の計9本。輪はゴム製で外径17㎝(±1mm)、内径13.8㎝(±1mm)、重量133g(±3g)です。
 
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公式ワナゲの場所・コート
屋外・室内を問わず、平坦な場所に台を設置し、図のように投輪(とうりん)ラインと設置ラインを引きます。なお、公式ルールでは2mより投輪します。ただし、申し合わせにより競技者の身体条件、技術レベルに応じて、投輪距離を別に設定しても構わない。
 
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輪の投法について
<横投げ(サイドフリップ投法)>
輪を地面に対して平行に保ち、足を前後に、肩幅よりもやや広くとり、サイドスローで投げる方法。この投法はコントロールが難しいですが、バウンド(跳ね返り)しにくいので、近距離に適しています。
 
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<正面投げ(センターフリップ投法)>
足を肩幅と同じぐらいに開き、利き腕がワナゲ台の中央部に向く形で、投輪ラインに沿って立ちます。その際、利き腕側の足を一歩引く姿勢をとるのもよいでしょう。
次に、輪が地面に対して平行になるように突き出します。そして、輪を持つ腕の力を抜いて後方に振り、その反動で投げるアンダースローのように投げます。慣れると的中率の高い投法ですが、バウンドしやすいのが難点です。
 
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ルール&競技の進め方
公式ワナゲの競技の進め方には、「単独投輪方式」「交互投輪方式の2通りがあります。ちなみに参加者の多い全国大会は、一人が9本の輪を続けて投げる「単独投輪方式」が採用されています。
なお、2つの方式に共通する投輪ルール(「投輪ルール123」)は、公式ワナゲの統一公式ルールの項で触れた通りです。
 
<単独投輪方式~参加者の多い大会の予選向き>
① 1人が9本の輪(赤色4本・黄色4本・青色1本)続けて投げる。
② 輪はどのように持って投げても構いませんが、投輪ラインの手前から投げる。投輪ルールは前述の通り。違反があった輪は「無効の輪」として取り除く。
③ 棒に入っている輪が無効の輪によって外れた場合は、外れた輪をもと通り棒に戻す。ただし、ワナゲ台に乗っていた輪が移動した場合はそのままとする。一度床に落ちた輪がその後台上に乗った場合は、無効の輪としてそのつど取り除く。
④ ワナゲ台の上に乗っていた輪が、その後のプレーで棒に入った場合、「有効の輪」となる。
⑤ 得点は、9本全部の輪を投げ終わった後、次のプレーヤーが計算する(相互審判)。
⑥ 投輪中は台が動いてもそのままにしておく。得点確認後もとに戻す。
〔得点について〕
・輪が入っていた下の数字が得点となる。
・縦横斜のいずれか1列に輪が入った場合は、「一期の原則」により15×2=30の点数になる。
・全部の棒に1本ずつ輪が入った場合は、「上がり」(パーフェクト)で300点となる。
 
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<交互投輪方式~競技者だけでなく、観戦者も十分楽しめる大会の決勝向き>
    ジャンケンで勝った方が先攻(赤色4本)、負けた方が後攻(黄色4本)となり(「負け後攻の原則」)、1投ずつ交互に投輪する。
*青色の輪(アンカーリングと呼ぶ)は投輪ライン付近の投輪に支障のない場所に置く。
    各4本ずつの輪を投げ終わり、互いの点数を確認した後、点数の低いプレーヤーには「アンカー権」が与えられます。なお同点の場は、アンカー権は施行されない(「和の原則))。
    得点は、青色のアンカーリング投輪後、セットごとに互いの点数を確認する(相互審判)。
    1試合は3セットで行い、2セット以降は前セットで負けた方が後攻となる(「負け後攻の原則」)。同点の場合、そのセットの先攻が次のセットの先攻となる。
    勝負は、1試合必ず連続して3セット行い勝ちセット数で競う。勝ちセット数が同じ場合、総合得点の多い人の勝ち。総合得点も同点の場合は、「和の原則」により引き分けとする。勝敗が必要な場合は「一投勝ち」で決める。勝負が必要な場合は「一投勝ち」で決める。
    2セットで勝敗がついても、試合は3セットまで行います。
 
〔得点について〕
・得点の数え方は単独投輪方式と同じです。
・アンカーリングにも「一期の原則」が適用されます。
 
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 3. 指導員主体で一層の発展を期す公式ワナゲ

 
公式ワナゲの大会について
公式ワナゲの大会は日本ワナゲ協会が共催する全国交流大会のほかに各道府県や市町村の老人クラブや支部等が主催する大会が各地で開催されています。各大会の概要に触れると――。
全国交流大会は、2007年10月24日に第1回大会を山形県で開催して以降、毎年同県で実施されています。ちなみに第1回から第3回までは上山市、第4回以降は山形市で開かれています。
第13回目を迎えた2019年大会は10月10日に山形市のヒルズサンピア体育館で行われ、68チーム・204人が参加(1チーム・3人)。選手以外にも大会関係者、選手の応援団など総勢400人超が会場に集い、競技を大いに盛り上げました。
なお、全国交流大会には例年県内の老人クラブや老人福祉施設の会員のほか、大阪・奈良(第1回大会から参加)、千葉(第5回大会から参加)などからも参加しています。
競技内容については、午前は個人戦で3ゲームを行い、その合計点で順位を決めます。そして、午後からは団体戦を開催。個人戦の合計点をチームごとに集計し、上位24チームがトーナメント戦で競い、上位1~3位を決めます。
特記事項としては、毎回東海大学山形高校・福祉科の学生が大会運営をサポートし、高齢者との交流を深めていることが、本大会の特色として注目されます。
一方、各府県や市、支部等が主催する大会は、福井県・埼玉県・京都府・高知県・千葉市・沖縄市などの老人クラブ、伊佐市公式ワナゲ協会(鹿児島県)、播磨町自治会(兵庫県加古郡)が主催する大会が各地域を盛り上げています。いずれの大会も、だいたい200人ほどが集まるそうです。
伊佐市公式ワナゲ協会では2019年6月に第5回伊佐市民公式ワナゲ大会を伊佐市ふれあいセンターで、2018年8月には大口校区自治対抗公式ワナゲ大会を伊佐市立総合体育館で開催しました。
千葉市生浜公式ワナゲ協会は毎年2月・9月に開催される千葉市老人クラブ主催の公式ワナゲ大会に協力して試合前に指導員2人が競技の指導を行うのが恒例です。
 
公式ワナゲの講習会について
現在、日本ワナゲ協会では定期的な講習会は開催しておらず、地域の老人クラブからの要望に応じて実施している状況です。
各地の近況に触れると、山形県では市町村の依頼により、2019年は次の通り10回普及員養成講座を開催しました(講師1人、1回あたりの参加者13~45人)。
 
2月1回(鶴岡市)/3月1回(鶴岡市)/7月4回(三川町、南陽市、山形市、米沢市)/9月2回(山形市、遊佐町)/11月2回(寒河江市、鶴岡市)
 
伊佐市は年3回程度普及員・公認指導審判員養成講座を開いており、各回20~30人ほどの参加者を講師2~5人で指導しています。なお、前述の大口小学校では2015年5月より、毎年クラブ授業として公式ワナゲを採用していて、講師3~5人で4年生以上の児童30人を指導しています。
千葉市は今のところ定期的な講習会を開催していませんが、毎月4回、生浜公民館で新規加入者の講習を兼ねた練習会を実施。毎回20~25人が集まり、講師2人が公式ワナゲの面白さやテクニック、魅力を教えているそうです。最近のトピックでは、近隣の茂原市から講習会の依頼があり、6〜12月にかけて月1回講習会を開講。毎回20人ほど受講者が集まったそうです(講師1人)。

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    ▲大口小学校の公式ワナゲクラブの様子。
 
公式ワナゲの運動効果を全国放送で披露!
今回の取材では、千葉市生浜公式ワナゲ協会の練習にお邪魔しました。同協会の会長は遠藤三郎さん。前会長の坂口さんは公式ワナゲ界のレジェンド。全国交流大会では個人戦で第5回~第8回まで4連覇、団体戦でも第7回と第12回大会の優勝に大きく貢献しました。
また坂口さんは、2019年12月9日放送のNHK Eテレ『ハートネット』(20時放送)で、ボッチャの第一人者・廣瀬隆喜さんや、新体操の田中琴乃さんと一緒に出演。それぞれの特技で集中力を競い合い、公式ワナゲの運動機能効果を存分に披露しました。
 
 ♧公式ワナゲに必要とされる運動機能
   筋力……輪の重さを生かした腕の力。
   平衡力……身体の均衝を保つバランス感覚。
   調整力……ひざの屈折や腕の振りを調整する力。
   頭の柔軟性……単に「投げる」から「考えて投げる」ゲームに必要な頭脳の柔軟な働き。
 
坂口さんのテレビ出演などで盛り上がる公式ワナゲ。日本ワナゲ協会に今後の展開について質問したところ、「都道府県での支部設置が理想」とのこと。大会や講習会についても、「現在ほとんど老人クラブが主体で開催。普及員や審判員は全国にたくさんいるので、そういった指導員が主体となって大会や講習会が開催できるようにしたい」と、課題・目標をコメントしてくれました。
一方、千葉市生浜公式ワナゲ協会代表の遠藤さんは「全国交流大会の団体戦優勝や坂口さんのテレビ出演を好機に、子どもから高齢者まで幅広く会員を増やしたい」と顔をほころばせます。
輪を投げて景品をとる縁日的遊びから脱却し、生涯スポーツへと進化を遂げた公式ワナゲ。「従来の楽しさを維持しつつ、対話型ゲームとして普及・発展させることが長寿社会を迎えている今こそ必要」という信念のもと、愛好者たちは元気一杯活動しています。単純だけど楽しくて、健康づくり、仲間づくりに最適な公式ワナゲ、エルダーのみなさんもぜひ一度挑戦してみては? 
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    ▲黄色枠の写真が公式ワナゲ界のレジェンド・坂口前会長。
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     ▲千葉市生浜公式ワナゲ協会のみなさん(後列左端:遠藤会長)。
 
<日本ワナゲ協会>
設立年:1967年4月
会 長:川島正英(NPOスローライフ・ジャパン 理事長)
 ホームページ:https://wanage.jimdo.com/



 

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