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音楽呼吸法③

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 去る83日、東京・渋谷区のライブハウスで『アンチエイジング健康ライブ』が開催されました。「音楽呼吸法」の解説を聞きながらエクササイズが体験でき、おまけにジャズライブも楽しめるイベントです。
音楽呼吸法とライブをドッキングさせたのは初の試み。会場の音響設備が素晴らしく、「これまで手掛けてきた呼吸法の曲がいい音で流れた。参加されたみなさんも気持ちよく体験できたのでは」と、考案者の宮浦 清さんは会心の笑みを浮かべました。
高齢化先進国・日本の新たなアンチエイジングソリューションとして、音楽呼吸法を提案していきたいと力を込める宮浦さん。今回はご年配のエルダー必読、「俳句川柳呼吸法」「嚥下筋強化呼吸法」の方法や、音楽の新しい展開形「ポストミュージック」について語っていただきます。
<最終
回>
 
 
 
◆みんな「このままじゃダメ」と気づき始めている
 
今年は音楽呼吸法の“見える化”に成功し、またライブとドッキングさせたイベントも開催するなど、大きな進展がありました。バレーボール、マラソンといったスポーツの世界でも成果を上げることができ、「これで音楽呼吸法を世の中に発信しても恥ずかしくない」と自信を深めているところです。
では、今後の展開をどのようなに思い描いているのか?
それは、高齢化先進国・日本のアンチエイジングソリューションとして音楽呼吸法を提案していくことです。
音楽呼吸法が目指すもの、それは第1回でも触れたように「高齢化時代を健康に生きること」、そして「自分の思いと生き方で健康になること」です。医療費の増大で保険制度が機能不全に陥りつつある現状下、これからは国や人に頼らず、自分自身の責任で健康を維持しなければなりません。そこで私が提案するのが、要介護者にならないための「健康レクリエーション」です。その中核として、音楽呼吸法を高齢者の方々や、まだ若い40代・50代の人たちにも提案していきたい。
特に40代・50代の人たちは高齢化が進展する現状に危機感を持ち、「このままじゃダメだ」と気づき始めているのではないでしょうか。彼らはバブル世代ですが、その後の人生で親を介護したり、看取ったりと、さまざまな苦労や経験を積んできているはずです。10年後、20年後の自身の姿を想像し、「自分のときはどうしたらいい?」と、真剣に考え始めているのがまさに今だと思います。
そうしたタイミングだからこそ、後期高齢者層に達した団塊世代や、これから高齢化していく世代に、わかりやすくて楽しい「健康レクリエーション」として音楽呼吸法を提案していきたいんです。 ライブ画像1-1
     ▲『アンチエイジング健康ライブ』の様子(8/3開催)

 
◆高齢者の3つの“しない”を改めるには?
 
高齢化が進むと行動範囲が狭くなり、思考も低下して、日常生活で何もせず、ボーッと毎日を過ごすケースがよくみられます。そうした傾向を私は、①動かない(行動停止)②考えない(思考停止)③変えない(変化停止)――3つの“しないと呼んでいます。
これらに対し、アンチエイジングの道を引き寄せるポイントとして、下の通り考えてみました。
 
◎「アンチエイジングのポイント」3つの“しない”を改める
①動かない(行動停止)行動する外出する
②考えない(思考停止)物事や行動に意識を向ける
③変えない(変化停止)行動やパターンを変える
 
①については、とにかく行動すること、外出すること。外出などは気分転換が図れるし、自然に足や腰、肩などを動かすので全身のストレッチにもなります。また、肩甲骨の動きはカラダのバックサイドを整えて姿勢が良くなるので、若々しい外見にしてくれます。
②については、物事や自分の行動に意識を向けていくこと。「次はどうなる?」「なぜ?」「どうして?」を常に考える習慣を持つようにしましょう。
③については、日常生活に変化をもたらす何かを探すこと。いつもと違う新しいやり方や、新しい趣味を意欲的に探してみるのも良いでしょう。
趣味なんかは、ご年配の方だと俳句や川柳を嗜んでいる人が多いのでは? 音楽呼吸法では、エクササイズの素材を音楽以外にも広げ、「俳句川柳呼吸法」というプログラムもあります。“見える化”した画像は下の通り。近頃は中年や若者にも愛好者が増えている俳句や川柳。呼吸法を通じて、親しんでみてはいかがですか?
 
<俳句川柳呼吸法(呼吸と575)> 
俳句図1  
は息を吸うところで、は息を吐くところ。“見える化”でつくった画像では、音に合わせてが動いていきます。
要領は第2回で紹介した「童謡唱歌呼吸法」と同じ。4拍でたっぷり息を吸い、の俳句を息つぎせず一息に詠みます。俳句や川柳の575は、4分の4拍子のリズムに乗ります。自分の呼吸に合わせて、手振り足踏みもしながら楽しく、リズミカルに詠みましょう!
 
<アドバイス!>
お気に入りの俳句や川柳を詠むだけでなく、自分の夢や目標、モットーなどを575でつくってみましょう。
 楽しみながら創作に取り組むことで、前述の3つの“しない”の一つ、
 
②考えない(思考停止)のアンチエイジングを引き寄せる効果が期待できます。
また、自分の夢や目標、モットーを毎日唱えることで、自己啓発にもつながることでしょう。 
音楽呼吸法575-1
 
 
◆「嚥下筋強化呼吸法」で誤嚥予防を
 
高齢者の死因の第3位が「誤嚥性肺炎」であることをご存知ですか?
食べ物や唾液などが食道ではなく、誤って気管に入ってしまうのが「誤嚥」で、それを原因に起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」です。
モノを飲み込む嚥下機能は加齢とともに衰えるため、中高年になると食事中にむせたりしやすくなります。さらに症状が進むと口からの飲食が困難になり、誤嚥を起す危険性が高まってしまいます。
嚥下機能の低下については、私も音楽家として、音に合わせて声を出すことで嚥下筋を強化する方法がないか、さまざま研究してきました。そして、たどり着いたのが1オクターブ差のある母音の「i(イ)」と「o(オ)」を繰り返し発声するトレーニング。それが「嚥下筋強化呼吸法」です。“見える化”した画像は下の通り。
 
<嚥下筋強化呼吸法(呼吸と喉の筋肉運動)> 
嚥下筋強化呼吸法図1  
喉に手を当てながら発声してみてください。「イ」を発声すると喉仏は首の一番高い位置になり、「オ」では一番低い位置になります。この喉仏の上下運動で、喉の筋肉=嚥下筋(喉頭挙上筋ともいいます)を鍛えるのです。
また、口も「イ」だと左右に大きく動き、「オ」は上下に大きく開くなど、口周りの筋肉運動にもなります。喉や口周りだけでなく、舌、首など、いろいろな部分も動かすのがこの呼吸法の特色。エクササイズの仕方は下の通りです。さっそくやってみましょう!
 
 <上段>
  上段の3小節は息を吐く。「i」も「o」もないところは、“見える化”画像のリズムや
   メロディーに合わせて声を伸ばす。
  例えば、1小節目は「イ〜オ〜イ〜、イ〜オ〜イ〜」。
  2小節目は「イ〜オ〜イ〜オ〜イ〜オ〜イ〜」。
  3小節目は「イ〜ーーーーーーー」と息を吐き切る。 
嚥解筋強化呼吸法2-1 
 <下段>
  下段の1小節では息を吸う。“見える化”画像のリズムやメロディーに合わせ、
   「
11」「22」「33」と頭の中で数えながら大きく息を吸っていこう!
   
<アドバイス!>
最初は喉仏を手で触りながらトレーニングしてみましょう。
 喉仏の位置は、
「イ」ではなるべく高く、「オ」ではなるべく低くなるように意識して行うのがポイント。
また、「イ〜オ〜イ〜」に慣れてきたら、「オ〜イ〜オ〜」と順序を変えてやってみましょう! 
イラスト1-1

 
「俳句川柳呼吸法」と「嚥下筋強化呼吸法」、いかがでしたか。
1回で紹介した「腹筋呼吸法」「横隔膜呼吸法」、第2回の「童謡唱歌呼吸法」と、音楽呼吸法のバリエーションに興味を持たれた方も多いのでは? ほかにも「スタティックストレッチ呼吸法」(呼吸とストレッチ)「ウォーキング呼吸法」(呼吸とウォーキング)、「舌筋強化呼吸法」(呼吸と舌の運動)など、さまざまなエクササイズがあります。
それらを「モジュール」と呼んで組み合わせ、一般向けの「健康レクリエーション」からアスリート向けまで、多彩なプログラムを私が代表を務める「音楽呼吸総研」では提供しています。1曲あたり3分ほどですから、例えば3曲組み合わせると1012分の呼吸訓練ができるわけです。関心のある方は、ぜひ、音楽呼吸総研のホームページ(https://musicbreathing.jpをご覧ください。
 
 
◆高齢化先進国・日本の別次元のクールジャパンへ
 
音楽を楽しむだけでなく、健康法として活用する音楽呼吸法。このような音楽の使い方に、新鮮なものを感じた方はきっと多いのではないでしょうか。でも、もともと音楽は聴いたり、演奏したりするだけのものではなく、日常生活の中で使うものでした。
古代ギリシャ時代、音楽(ミュージック)の原語となった「ムジカ」という言葉がありました。これは、自然と人のハーモニー(調和)を考える哲学を指す言語です。例えば、なぜ太陽が落ちてこないのか? なぜ夜が更けて朝が来るのか? などなど……。
また、「ムジカ」には人々が音を出し合って、お互いの調和を理解していこうという考え方があり、その音楽を演奏することを「カントール」と呼びました。「カンツォーネ」に近い言葉で、関係があるかもしれません。
音楽の素晴らしさは、すべてのものを一つにまとめ、つなぎ合わせてしまう力です。楽器が奏でられると、人々はみな自ずと耳を傾け、感動を共有し合います。美しい旋律には、小鳥や動物さえ、聴き入ってしまう童話もあるほどです。それくらい、音楽はすべてのものをまとめる力、ハーモニー(調和)を持っているのです。
そうした音楽の力を昔の人たちは生活の中に取り入れ、活用してきたことは第1回でも触れました。苦しい労働を和ませる労働歌、子どもをあやすときの子守歌、みんなで力を合わせる際に発する「セーノ!」「ワッショイ!」といった掛け声など――。音楽は人類の歴史とともに、日常の中で調和を引き出す手段として使われてきたのです。
その音楽が芸術として捉えられるようになったのは、バッハ以降のここ300年弱のこと。そして、音楽が芸術として一般人の生活から離れていったのは、ベートーベン以降のここ200年弱のことなのです。
今の音楽は生活の手段から、芸術・娯楽の目的になった。「ムジカ」が忘れ去られ、「カントール」ばかり目立つようになったといえるでしょう。
しかし時代は進み、ITの進展などもあり、現代社会には音楽以外の芸術や芸能、趣味、楽しみが台頭してきました。その結果、音楽産業が斜陽化してきたのはご存じの通りです。
こうした現象は、人々が音楽を嫌いになったから起きたのではありません。人々の音楽への興味が飽和されてきたことに起因すると、私は考えています。
音楽を追い求める人も、ひと頃より減りました。なぜなら、音楽以外に追い求めたくなる選択肢が多く生まれてきたからです。
でも、人々は音楽の素晴らしさを忘れていません。音楽を追い求めて音楽に接するのではなく、別の目的を追い求める中で音楽に触れたとき、人々は音楽の素晴らしさを改めて認識するのです。
このような音楽の新しい展開形、いえ、300年以上前まで持っていた音楽本来の意味に立ち返る「ポストミュージック」が、21世紀の音楽産業を支えると私は予感しています。そして、そのキラーコンテンツの一つが、「ムジカ」に焦点を当てた「音楽呼吸法」なのです。
世界中が超高齢化に向かう日本を注目しています。私はそうした国々に対し、音楽呼吸法を別次元のクールジャパンとして発信していきたい。まずは日本国内で広めていき、超高齢化でうつむきがちな世の中を、音楽と一緒に楽しく、元気にしていければいいですね(笑)

            ➣➣➣     ➢➢➢     ➣➣➣

 3回にわたり特集した「音楽呼吸法」、いかがでしたか?
普段、特に意識せず行っている呼吸ですが、この当たり前に思える呼吸には“質”があり、それを改善することで人間本来の能力や体力、感性を十二分に発揮できるようになる――という話に、目からウロコが落ちた気持になった人も多いのでは。
呼吸と同じく、リズムの重要性も強調する宮浦さん。
「人はリズムを刻んで生きています。一番長いサイクルが『生まれて死ぬ』まで。そして、一番短いサイクルが『息を吸って吐く』こと。リズムを意識しないと、せっかくの生命がちょっと力不足になる。リズムはエンジン!」
など、本文で語っていただいた内容以外にも、たくさん印象に残る話を聞かせていただきました。
メロディーを聴きながら楽しく実践し、難なく習慣化することのできる音楽呼吸法ですが、やはり継続するには「自分を律する」ことが大切と宮浦さんは最後に釘を刺しました。
「結局、自分を律することができなければ、何をやっても偽物になり、会得できません。常に自分自身を律してこそ、本物に近づき、高みへ到達できるんです。また、そうした前向きでポジティブな気持ちが、世の中全体を良くしていくのではないでしょうか」
楽して身につくものなんかないことは、人生の先輩であるエルダーのみなさんも十分ご存じのはず。音楽呼吸法はもちろん、どんな健康法にも自分自身を律し、前向きな気持ちを忘れずに取り組んでいきましょう!
  <「音楽呼吸法」おわり~次回は知る人ぞ知る、神楽坂・毘沙門前の花屋さんの45年にわたる街商人生をみつめます>
 
                *          
<音楽呼吸法創案者>
宮浦 清
作曲家、サキソフォニスト、呼吸研究家、セロトニンDojo師範
合同会社音楽呼吸®総研代表
 
お知らせ
① 宮浦さんが代表を務める音楽呼吸®総研では、定期的に「音楽呼吸法体験会」を開催中です。
 
② DVD『歌と映像で誰でも身につく音楽呼吸法』を11月下旬に発売開始!
<第1弾> 4,800円(税別)
・アクティブシニア向け健康カラオケ
・歌と映像で健康レクリエーション
・童謡唱歌 音楽呼吸法
<第2弾> 4,800円(税別)
・誤嚥対策、首回り美容健康対策に
・歌と映像で健康レクリエーション
・嚥下強化 音楽呼吸法
 
 
(問い合わせ先)
合同会社 音楽呼吸®総研
東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター10F
050-5305-6109
 

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