今月の健康記念日
- 2023/10/26
- 10:40
🕊人類の歴史とともにあるジビエ文化
ジビエ(gibier)はフランス語で、狩猟によって捕獲された野生動物の肉を指す言葉です。鹿や猪、キジ、ウサギなど、山や森で暮らす動物たちの肉がジビエになります。
古代の人々は狩猟しながらジビエを調達し、命をつなぐ糧にしてきました。そうしたことから、ジビエの歴史は世界各地で認められており、国や地域ごとに異なるジビエの伝統や文化があります。古代ローマ帝国や中世ヨーロッパでは、ジビエは王侯貴族の宴席で重要な役割を担っていたそうです。
日本でもジビエは古代から食べられていましたが、仏教の普及で「不殺生戒」(ふせっしょうかい:命のあるものを殺してはいけない教え)の思想が広まり、下火になっていきました。しかし、マタギなどの猟師が鹿や熊、猪などを獲り続け、山岳地ではキジやツグミなどの野鳥が食べられていました。ウサギを一羽、二羽と数えるのも、鳥と偽りながら食べられていた名残です。
江戸時代には、近郊の農村から仕入れたその手の肉を取り扱う「もんじ屋」と呼ばれる店が存在していました。つまり、実際には日本人もジビエを食べ続けてきたといえるでしょう。
文明開化を迎えた明治時代以降、日本人にも肉食が広まるのはご存知の通り。時を経て平成の世になると、フレンチ食材としてのジビエが日本に輸入されるようになり、ジビエが注目されるようになります。
🕊野性味あふれるジビエの栄養価と、美味しい料理法は?
家畜の肉とはまた違い、野性味あふれる味わいが楽しめるジビエ。その魅力は高い栄養価と、幅広い調理法にあります。
ジビエは高品質なタンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富で、同時に低脂肪なのが特徴。このことがヘルシーな食材という、ジビエのイメージを高めているのでしょう。特に鉄分やビタミンB群を多く含むので、カラダに十分なエネルギーを供給し、免疫力も向上させます。
ジビエの調理方法は、ロースト、シチュー、グリル、ソテーなど、多種多様あります。たとえば猪の場合、肉がしっとりとした食感なので、シチューや煮込みに適しています。一方、鳥類のジビエは食感が軽いので、グリルやソテーがおススメです。ジビエの代表的な料理としては、猪肉のローストや鹿肉のグリル、キジの鍋などが挙げられます。
ヘルシーで美味しいジビエですが、やはり野生動物の肉なのでウイルスや大腸菌、寄生虫による食中毒などのリスクもあります。また、ジビエには野生動物特有の臭みやクセがある場合もあります。安心して美味しく食べるためにも、料理する際はしっかり加熱し、臭みやクセを抑える調理法も調べておきましょう。
ジビエの旬は、野生の鳥獣が冬に備えて栄養を蓄える秋。ジビエの風味を生かした調理法はバラエティーに富み、香草やワインとの相性も抜群です。ジビエの栄養価と多様な調理法を活用して、ヘルシーで美味しい料理を楽しんでみましょう。
🕊ジビエを食べて、命の有難さと自然の大切さを感じよう!
近年、山間部で暮らす農家の人たちの高齢化や人口減もあって、田や畑の管理が行き届かなくなり、耕作放棄地の増加に伴い、鹿や猪、そして熊が縄張りを広げる傾向が顕著になっています。
かつて日本では、本州・四国・九州には二ホンオオカミが生息し、食物連鎖の頂点にいましたが、人間による駆除などが原因で絶滅しました。そのため、今は人間がいなくなった里山を支配するのが鹿や猪、熊になったのです。鹿や猪は農作物や木の新芽を食べてしまい、このまま数が増えていくと自然破壊につながりかねません。
また今年は、猛烈な酷暑による木の実の不作が原因で、熊が頻繁に市街地に出没し、家畜を襲ったり、人に危害を加えたりする問題が目立ちました。
農作物対策として狩猟された鳥獣肉を「ジビエ」として供給するビジネスが拡大していますが、ジビエは美味しくてヘルシーなだけでなく、生態系の調整に貢献したり、地球環境を考えさせる食材として注目されています。私たちの食卓に健康と、豊かな風味をもたらしてくれるジビエ。この大自然からの贈り物を家族で食べて、命の有難さや尊さ、自然の大切さを改めて感じる機会にしたいものですね。
参考:宇佐ジビエファクトリーHP、テンポスフードメディア、@Press、NHK「GEN SENおおいた」、朝日新聞DIGITAL、読売新聞オンライン、Wikipedia等