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音楽呼吸法①

音楽呼吸法トップ1-1
 
今、音楽やリズムに合わせて楽しく実践できる健康法、「音楽呼吸法」が注目を集めています。
考案したのは、作曲家でサキソフォニスト、そして呼吸研究家でもある宮浦清さん。アニメ映画『ルパン三世風魔一族の陰謀』のサントラや、J-WAVEFM局)番組テーマ曲『アフターザレイン』の作編曲などで知られています。
日頃、特に意識せず行っている「呼吸」。人間にとって最も重要な生命活動ですが、その“質”について考える人は案外少ないのでは? “呼吸の質”の低下は心身のバランスを乱し、鬱やストレス、不定愁訴を招くほか、生活習慣病の蔓延の遠因にもなります。
呼吸力アップを目指す健康法は数あれど、なかなか続かないのが悩み。でも、懐かしい童謡や唱歌を唄ったり、俳句・川柳を詠みながら行うトレーニングは、難なく習慣化することができます。
誰もが簡単に“呼吸の質”を高められる最新の健康メソッド「音楽呼吸法」。今回はその概要や基本的なエクササイズ方法について、宮浦さんに語っていただきます。<全3回>
 
 
◆古くて新しい音楽の使い方、「音楽呼吸法」
 
私が「音楽呼吸法」を考案したのは2004年のこと。以来、ライブ活動や企業・大学等のセミナーなど、さまざまな場で紹介してきました。
また、スポーツの世界でも関心を持っている方が多く、女子バレーボールチームの「デンソーエアリービーズ」、第一生命グループ女子陸上競技部などで指導し、3人のアスリートが2016年リオデジャネイロオリンピックの日本代表選手に選ばれるなど実績を上げています。
 
音楽呼吸法とは、その名の通り音楽のリズムに合わせて呼吸法を行い、心身のバランスを整える健康法です。
呼吸を意識しながら童謡や唱歌を唄ったり、俳句・川柳をリズミカルに詠んだり、またストレッチも加えて呼吸とカラダの動きをシンクロさせるなど、独特のエクササイズで生命力をアップさせるものです。
 
日常的に無意識で行うことの多い呼吸。その呼吸を音楽に乗せて生活習慣にする――。一見、呼吸と音楽は離れたところに存在しているようですが、実はとても密接な関係にあります。
音楽はもともと日常生活の中にあったもの。歌を唄い、リズムをとって生活の流れや調和、そしてエネルギーの一体化を図ってきました。例えば、苦しい労働を和ませてきた労働歌、子どもをあやすときの子守歌、たくさんの人が力を合わす際に発する「セーノ」「ワッショイ」といった間の手や掛け声などなど……。音楽は人間社会の調和を引き出す手段として生まれたのです。
そして音楽は人間のカラダに対しても、リズムの共鳴やシンクロという大きな影響を持っています。
音楽を聴くだけでなく、音楽が持つエネルギーを自ら使っていく。上手い・下手を超えた古くて新しい音楽の使い方――それを提案するのが音楽呼吸法です。
 
 
21世紀は呼吸の“質”を学び伝える時代
 
音楽呼吸法が目指すもの、それは「高齢化時代を健康に生きること」、そして「自分の思いと生き方で健康になること」です。
高齢化が進む日本では、医療費の増大などで保険財政が逼迫してきました。そうした日本の動向を世界中が注目しています。既存の医療保険制度が破綻しつつある状況下、これからは国や人に頼るのではなく、自分自身の責任で健康を維持していかなければなりません。
そこで、私が提案したいのが「健康レクリエーション」です。
介護施設やデイサービスなどで、利用者のQOLQuality of life:生活の質)向上を目的に「介護レクリエーション」が盛んに行われていますが、「健康レクリエーション」はそもそも要介護者にならないための手段です。
要介護者にならないためには、体力・気力があるアクティブシニアの人たちや、まだ40代ぐらいの人たちも、今後の長い人生を見据え、自ら心身の健康を意識した生活を始めなければなりません。その手段として「健康レクリエーション」を提案したい。音楽呼吸法は、その“根本中の根本”と位置づけています。
 
人の体力は昔と比べてかなり低下し、病気にもかかりやすくなりました。このような状況がなぜ起きたのか? それは昔と今の生活が、ほとんど真逆な状態であることに起因しています。
昔は不便な生活でしたが、労働、運搬、移動、家事などで、自ずと呼吸が深くなるシーンが多くありました。特にしゃがむ動作は腹圧を高め、体幹部の呼吸筋を鍛えていたのです。
一方、今の生活はどうでしょうか? 電化製品の普及、自動化、IT化などでかなり便利になり、昔ほどカラダを動かさなくてすむようになりました。しかし同時に、それまで深かった呼吸がどんどん浅くなってしまいました。
その結果、本来持っていた人間能力の低下によって病気にかかりやすくなり、脳内神経物質のセロトニン(別名:幸せホルモン)も欠乏して、心身のバランスを乱すケースが増えてきた……。
そこで私が気づいたのは、呼吸には“質”があるということです。
IT化の進展に加えAIなども登場し、これからの世の中はさらに利便性が向上し、人がカラダを動かす機会が益々減っていくことでしょう。
 でも、「カラダを動かさない」ということは「呼吸が浅くなる」ということ。このような時代だからこそ、呼吸の“質”を意識した生活を心掛けなければなりません。呼吸を学び、伝えていかなければならないんです。
21世紀は呼吸を学ぶ時代」だと、私は考えています。
 
 
◆「健康」「呼吸」「音楽」でQOBの向上を
 
以上のことを踏まえ、「音楽呼吸法」では下の通り「健康」「呼吸」「音楽」といった3つのキーワードを提案しています。

 
3つのキーワード
 
3つのキーワードをそれぞれ説明すると――。
「健康」で掲げる「健康はエチケット」、これこそ「音楽呼吸法」が提案する高齢化先進国・日本の世界へ向けたメッセージです。
もっとも、不健康な人が悪いという意味ではありません。常に自分のカラダに気を配ることで、QOLADLActivity of daily life:日常生活動作)の向上を目指そうということです。
「呼吸」では、かつて私たちが生活の中で自然に行っていた「質の高い呼吸=QOBQuality of breathingを提案しています。
いうまでもなく私たちはみな、生まれた瞬間から死ぬ直前まで呼吸を繰り返します。すなわち、生きることは「息をする(呼吸する)こと。同じようにQOLの向上は、まさしくQOBの向上を意味します。
QOBを高めるには、呼吸法を生活習慣にしなければいけませんが、やはり楽しくないと継続は難しい。その点「音楽」なら、生体のリズムとシンクロする健康メソッドなので、楽しみながら続けられます。
また、「音楽」は“時間の流れをつくる”ことができる点も注目ポイントです。どういうことか? まず、音楽の特色から触れましょう
音楽と絵画の違いって、何だかわかりますか? 絵画は一度に全体を見渡すことができますよね。でも、音楽はリズムが刻む時間の流れを感じて、はじめて全体が理解できるものなのです。
つまり、音楽は時間の流れをつくることができる、人間だけが持っている特別な感性なのです。
生命は時の流れとともに変化し続けるもの。その変化がなくなった時、生命は死を迎えます。したがって、生きている私たちの生活はすべて、時の流れの中に存在しています。
運動する、食事する、仕事する……すべての生活は時間の経過を伴っているのです。健康を引き寄せられる時間の過ごし方があればQOLは向上する。そして、時間の過ごし方は音楽でつくることができる。
QOBが向上する音楽を作曲しよう」
これが“健康を作曲する”という意味です。「音楽呼吸法」は、こうして生まれました。
 
 
◆「音楽呼吸法」をやってみよう!
 
それでは「音楽呼吸法」の基礎的なエクササイズ、「腹呼吸法(呼気の呼吸)「横隔膜呼吸法(吸気の呼吸)を紹介しましょう。
 
<腹筋呼吸法(呼気の呼吸)>
まず、呼吸を深くするためには、どうしたらいいと思いますか?
それは一言でいうと、「吐く息を長くする」ことです。
多くの人が息を十分吐き切っていないのに、吸い込もうとします。そのため、息をため込む肺のキャパシティがどんどんなくなり、浅い呼吸になってしまうのです。
人間のカラダは、「交感神経」と「副交感神経」から成る自律神経でコントロールされており、吸気では「交感神経」、呼気では「副交感神経」が作用します。
無意識の呼吸は交感神経の指令を受け、横隔膜が微妙に緊張して下降するとともに息を肺に取り込み、息を吐くときは横隔膜が弛緩し上行し、肺を押し上げ息を吐き出しています。したがって、吐く息を長くするには、意識して腹筋を引き締め、横隔膜をより上行させることが必要となるわけです。
そこで考案したのが「腹筋呼吸法(呼気の呼吸)です。
「吐く息を長くする」――これを下の通り4小節で息を吐き、2小節で息を吸う音楽で表現してみました。
 
腹筋呼吸法1-1
 
これはコンピューターでプログラミングした映像で、音楽呼吸法を“見える化”したものです。
図中の黄色がメロディーの拍子とともに、14へと順番に移動していく仕組みになっています。そのリズムに合わせれば、高齢者でも、お子さんでも、誰でも簡単に「音楽呼吸法」を行うことができます。
テンポは自由に設定できますが、例えば1分間に100の速さ60秒÷1000.6でやってみましょう。4小節で息を吐き切り、そのあと2小節で息を吸い込む――この1サイクルが約140.6秒×6小節分の24拍→14.4になるので、1分間に4回ほど深い呼吸を行うことになります。普段の生活では1分間に1216回呼吸をしているので、実際にやってみたら、4回に減らした呼吸がいかに深いかおわかりになるでしょう。
「腹筋呼吸法」は、ゆっくり行えば行うほど呼吸が深まり、過呼吸に陥る危険性も低くなります。ただし無理はしないこと。自分のペースでカラダをいたわりながら進めてください。エクササイズの方法は下の通り。音がなくてわかりづらいでしょうが、試しにやってみてください。
 
 <上段>
  1小節目から順に「1234」「2234」と頭の中で数えつつ口から息を吐き、
   最後の4小節目にかけて息を吐き切る。リズムよく、お腹を凹ませながらやろう!
 
腹筋呼吸2-1

 
 <下段>
  上段と同じく「1234」「2234」と頭の中で数えながら、最後の2小節目にかけて
   鼻から大きく息を吸い込む。凹ませたお腹を緩め、お腹に息を入れる感じ!
 
腹筋呼吸3-1
 
 
コラム・バリエーション1-1  
 
 
 
<横隔膜呼吸法(吸気の呼吸)>
前述の通り、息を吸うと交感神経の作用で横隔膜が下がり、お腹が膨れて腹圧がかかります。しかし、呼吸が浅い現代の生活では、横隔膜の可動範囲が狭くなるという傾向があります。特に高齢者の方などはその状態で横隔膜が硬直し、息を多く吸い込めないケースが散見されます。息を十分に吐けなくなるという一般的傾向だけでなく、息が吸えない、という方も増えてきているのです。
そこで下の通り、「横隔膜呼吸法」では横隔膜が柔軟になるよう、4小節で息を吐き、3小節で息を吸うパターンの音楽をつくりました。横隔膜と腹筋の連動をより促すべく、先ほどの「腹筋呼吸法」と比べ、息を吸う小節を2小節から3小節に増やしました。横隔膜の可動範囲を広め、息をたっぷり吸い込む呼吸エクササイズです。
 やり方は下の解説の通り。
横隔膜が柔軟になると、胸に負担をかけずに息が吸い込めます。
 
横隔膜呼吸1
 
 <上段>
  1小節目から順に「イチ〜ニイ〜」、「ニイ〜ニイ〜」、「サン〜ニイ〜」と頭の中でゆっくり数え
   (8分の6拍子というリズムなので、音楽の知識のある人は3連符をイメージ)、
   最後の4小節までに息を吐き切る。お腹を凹ませながら、口から息を吐くのがポイント!
 
 <下段>
  上段と同じく、「イチ〜ニイ〜」、「ニイ〜ニイ〜」、「サン〜ニイ〜」と頭の中でゆっくり数え、
   最後の7小節までに大きく息を吸い込む。凹ませたお腹を緩め、鼻から息をお腹に入れるように。
 
  音楽呼吸法②」に続く次回は「音楽呼吸法」考案の経緯や企業・スポーツでの指導実績、「童謡唱歌呼吸法」を紹介!

 
             *         

<音楽呼吸法
創案者>
宮浦 清
作曲家、サキソフォニスト、呼吸研究家、セロトニンDojo師範
合同会社音楽呼吸®総研代表
 

【お知らせ】
 ①宮浦さんが代表を務める音楽呼吸®総研では、定期的に「音楽呼吸法体験会」を開催中です。
 
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 ②アンチエイジング健康ライブ
    音楽呼吸法体験会& Bossa Nova JAZZ LIVE
               2018年10月5日(金)開催
 <出演>
 宮浦 清(サックス)、羽仁 知治(ピアノ)、越田 たろま(ギター) 
 <第一部>
 アンチエイジングのメソッドとして最適な音楽呼吸法のダイジェスト版を、
 創案者の宮浦清が音と映像を使って紹介します。
 <第二部>
 初秋を彩るアダルトでクールなボサノバを爽やかなアコースティックギターと
 ピアノのサウンドにのせてお届けします。
 
 アートカフェフレンズ(東京都渋谷区恵比寿南1-7-8-B1F)
 開場18:00 開演19:30  チャージ3500円(+1ドリンク500円)
 主催:音楽呼吸総研 後援:夕刊フジ
 
 予約・問合せ:アートカフェフレンズ(03-6382-9050)
 

 ③DVD『歌と映像で誰でも身につく音楽呼吸法』を11月下旬に発売開始!
<第1弾> 4,800円(税別)
・アクティブシニア向け健康カラオケ
・歌と映像で健康レクリエーション
・童謡唱歌 音楽呼吸法
<第2弾> 4,800円(税別)
・誤嚥対策、首回り美容健康対策に
・歌と映像で健康レクリエーション
・嚥下強化 音楽呼吸法
 


(問い合わせ先)
合同会社 音楽呼吸®総研
東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター10F
050-5305-6109


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