米国で大人気の「ピックルボール」。バドミントンと同じ広さのコートで、専用ラケット(パドル)を使い、多数の穴の開いたプラスチック製ボールを打ち合うニュースポーツです。
ピックルボールの魅力は、30分ほどのレクチャーでラリーが楽しめるほど簡単なこと。穴空きボールが風の抵抗を受け、強く打っても速度が弱まるため、子どもからシニアまで一緒に楽しむこともできます。
また、運動としてもゆるすぎず、激しすぎず、ちょうどよい強度のため、米国では特にシニア世代を中心にブームとなっており、「米国でもっとも成長しているスポーツ」として注目されています。
今回は日本でも愛好者が増えつつあるニュースポーツ、ピックルボールを紹介します。
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1. 米国発祥のスポーツ、ピックルボールとは?
◎飼い犬の名前が由来!? ピックルボール誕生秘話
「なにか楽しい遊びない?」
1965年、ワシントン州シアトルのとある家庭で、退屈した子が親にたずねました。その求めに応じようと父親が発奮。家族で楽しめるゲームを考案し、さっそく道具を自作しました。そして裏庭に専用のコートもつくり、新しいゲームを飼い犬の名前「Pickle(ピックル)」からとって「Pickleball(ピックルボール)」と名づけました──。これがピックルボールの誕生エピソードと言われています(ピクルボートからという説も)。
簡単で手軽に楽しめる家族のゲームは、たちまち近隣の注目を集め、子どもから大人、シニアまで世代を問わず人気に。そして、地元シアトルから全米へ普及し、やがてカナダ、スペイン、インド、フランス、イギリス、オランダ、日本など、世界各地へ広がっていきました。
現在ピックルボールの競技人口は、アメリカ310万人、アジアやヨーロッパ、オーストラリアで10万人強を数えます。
◎アメリカではシニア世代を中心に大人気!
ゆるすぎず、激しすぎないピックルボールは、運動としてもほどよい強度なため、アメリカでは特にシニア世代を中心にブームとなっています。こうした状況から、ハードコートを有するテニスクラブがピックルボールクラブに鞍替えするケースも散見され※1、それが世代を超えた愛好者の拡大につながっているそうです。
またテニスプレーヤーの愛好者も増え始め、元テニスランキング1位のアンディ・ロディック選手がピックルボールを楽しんでいるほか、元全豪女子オープン優勝のバーバラ・ジョーダン選手はピックルボーラーとして活躍しています。
ちなみにアメリカのスポーツビルダー協会の調査によると、CBSでピックルボールの決勝が放映された際の視聴者数は5000万人に及ぶとしています。
※1 【1面のテニスコートから“ピックルコート”が何面できる?】
アメリカではテニスコートを改装して、1面のコートから2~4面の“ピックルコート”をつくっている例もある。
▲アメリカのピックルボーラーたち。
◎日本でピックルボールが広まったきっかけは?
2015年4月、全米チャンピオンのダニエル・ムーア選手が東京・八王子市を訪れ、日本で初めてピックルボールを紹介しました。ダニエル選手を招いたのは、同じ4月に任意団体として発足した「日本ピックルボール協会」(現谷口陽子会長、以下JPA)です。
「アメリカで急成長しているピックルボールが、今後、日本でも必ず普及すると強く感じ、万人が楽しめるスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と豊かな人間性を培うことで、社会の発展に貢献することを第一に考えた」(JPAコメント)のが設立の趣旨です。
JPA初代会長の岸本祐二郎氏は、ピックルボールの普及をさらに図ろうと同年10月1日、「八王子ピックルボール協会」(初代会長:岸本氏、現会長:小川英一郎氏)を設立。そして同月20日に八王子市で「第1回ピックルボール日米交流会」(会場:エスフォルタアリーナ八王子)を開き、ダニエル選手、スコット・ムーア選手(ダニエル選手の父)など約15人のピックルボーラーを招いて、交流会を大いに盛り上げました。その際、一般市民の参加も募ったことで認知度が高まり、以降、定期的に練習する人たちが増えていったそうです。
このような状況を背景に、JPAは自治体との折衝や連携を円滑に図るべく、2017年4月に一般社団法人の資格を取得。現在、同協会を中心にピックルボールの普及が推進されています。
なお、JPAは会員制をとっていないため、会員はいません。協会の運営費については、愛好者から徴収する大会参加費の一部を充てているそうです。
◎日本におけるピックルボールの普及状況は?
JPAによると、日本国内の競技人口は潜在的に約1000人のプレーヤーがいるそうです。分布状況については、長野県の佐久市が250人と国内最大規模を誇り、八王子市150人、世田谷区・杉並区30人(以上東京都)、津山市ほか(岡山県)150人、横浜市・町田市(神奈川県・東京都)50人、山形市(山形県)30人、神戸市(兵庫県)30人、睦沢町(千葉県)20人──と続きます(700〜800人が定期的に活動)。年齢構成は最年少が8〜9歳で最高齢は87歳、男女比は男性6:女性4くらいの割合とか。ただし、岡山県については男性1:女性9と圧倒的に女性愛好者が多く占めています。
今回取材に協力していただいた「世田谷ピックルボールクラブ『セタピーズ』」(代表者:稲葉涼美さん、村上直子さん)も、登録メンバー約20人(最年少21歳、最年長87歳)の内7割が女性のクラブです。同クラブは都区内の会場確保を目的に2018年11月に設立されました。現在、世田谷区内の小中学校体育館の空いている場所で練習しています。会費はなく、1回の練習参加費300円を会場利用料と運営費に充てて活動しているそうです。
▲世田谷ピックルボールクラブの練習風景<その1>。
2.ピックルボールのコート、用具、ルール
◎ピックルボールのコート
ピックルボールのコートのサイズは、長さ13.4メートル、幅6.1メートル。つまり、バドミントンダブルスのコートと同じサイズです。ネットは一般的に90センチの高さに張られますが、公式戦では両端で91.4センチ、中央で86.4センチの高さと定められています。
◎ピックルボールの用具
ピックルボールの用具はボールとパドル(ラケット)の2つ。
ボールはプラスチック製の中空ボールで、表面に多数の穴が空いています(屋内用26穴、屋外用40穴)。サイズは直径6.99~7.62センチで、重さは21~29グラム。ボールの穴は小さいものと大きいものがあり、小さいものは屋外向き、大きいものは屋内向きです。
パドルは幅20センチ、長さ40センチほどで、卓球のラケットより一回り大きいサイズになっています。ちなみにサイズは細長いものもあり、愛好者の好みによって選ばれています。材質は安価な木製品から高価な繊維強化プラスチック製品まであり、競技志向のプレーヤーはもちろん後者を用いています。
◎ピックルボールのルール
ピックルボールは、サーブ権を持つ側がポイントを取ると、スコアが1点加算されます。そして、先に11ポイントを取った方が1ゲーム勝ちとなりますが、そのとき、相手に2ポイント以上の差をつけていなければなりません。その条件を満たしていない場合は、2ポイント以上の差がつくまでゲームは続行されます。
なお、ピックルボールにはダブルスとシングルスの両方ありますが、ダブルスが一般的のようです。
<サーブについて>
サーブはコートのベースラインの後ろに立ち、相手の対角側にあるサービスコートにノーバウンドで打ち込みます。その際、ベースラインを踏んでしまうとフットフォルトになります。
サーブの打ち方は、「手でボールを空中に上げ、腰よりも下の位置で打たなければならない」という決まりがあります。つまり、アンダーハンド(下手打ち)で打つということ。サーブしたボールがネットに触れた後、サービスコートに入った場合は打ち直しとなります。
以上の条件を満たさなければサーブは失敗したとみなされます。なお、シングルスではサーブ側がミスをした場合、もしくは相手が決めた時にサーブ権は相手に移ります。ダブルスの場合はペアに交代します。2人目のサーブで同じ状態になった時に、サーブ権が移ります。
<レシーブについて>
サーブをレシーブする際は、必ずワンバウンドさせてから打たなければなりません。一方、サーブした側も最初のリターンボールはワンバウンドさせて打つのがルールです。
<ボレーについて>
バウンドさせず、空中のボールを打つことをボレーといいます。ピックルボールでは、プレーヤーの足がノンボレーゾーンの外にあるとき、ボレーを行うことができます。ノンボレーゾーンの外で打っても、直後に入ったらフォルトになります。
<その他、ゲームの進め方について>
このほか、ボールをカラダ(パドルを握っている手以外)で打ち返したり、またボールが衣服に触れた場合はファールになります
ゲームの進め方については、まずじゃんけん等で勝ったほうがサーブ、もしくはレシーブを選ぶ権利を得ます。そして、最初のサーバーはセカンドサーブから開始し、以後サーブ権は2回保有します。
試合は3ゲームマッチの2ゲーム先取、時間は1ゲーム15~20分ほどが目安。上級者も初心者も一緒にプレーできるうえ、体力の消耗も少ないので、生涯スポーツとして大変有意義と考えられています。
▲世田谷ピックルボールクラブの練習風景<その2>。
3. ピックルボールの今後の盛り上がりに期待!
◎ゆるく楽しむ一方で、競技志向の高まりも
誰でも簡単に楽しめるピックルボール。小学生から元気なシニアまで、同じコートで一緒にプレーできるのが最大の魅力です。
また、障がいを持つ人たちもリハビリを兼ねてピックルボールを楽しんでおり、米国では車いすのプレーヤーもいるそうです。
その一方で、本格的にテニスやバドミントンをしていたシニアや、故障した若いプレーヤーなどがピックルボールに転向するケースが、国内でも多く見られるようになってきました。
JPAでは「誰でも、老若男女問わず楽しむ!」を理念に掲げ、通常は相手とのラリーをゆるく楽しんでもらっていますが、近年は競技性の高いゲームを求める愛好者も増えているそうです。
◎ピックルボール初の日本選手権を開催!
今年7月13日と14日の2日間、岡山県津山市でピックルボール初の日本選手権が開催されました。競技性を重視した全国大会です。当日は会場の津山総合体育館に、10~70代のプレーヤー約80人が日本各地から集結。ほかにもアジアの強豪国・台湾から3人のピックルボーラーが参戦しました。
大会は13日に男女混合のミックス(16ペア出場)、14日に男女別ダブルス(男子12ペア、女子15ペア出場)のゲームが行われ、ミックスでは地元津山市・美作大学のペアが優勝。同ペアはJPAの補助を受けて、現在(9月24~29日)、米国ラスベガスで開催されている大会(Las Vegas Pickleball Open)※2に日本代表として出場しています。
ゲームに負けて、涙する選手もいたという今回の日本選手権。愛好者の競技志向の高まりを受け、JPAでは今後もピックルボールをゆるく楽しめる生涯スポーツ大会(イベント)とともに、競技性の高い大会も増やしていく方針です。
※2【Las Vegas Pickleball Open 概要】
会場:ラスベガスPlaza Hotel ピックルボールコート
賞金総額:25,000ドル
カテゴリー:男子・女子・ミックスプロダブルス
男子・女子・ミックスシニアプロダブルス
年齢グループ:19歳以上、50歳以上、65歳以上
<本大会に出場した日本代表ペアの成績について知りたい人は、JPAのホームページ(http://jpickleball.org/)にアクセスしよう!>
◎ピックルボールの今後の盛り上がりに注目!
米国に限らず高齢化の進む日本においても、シニアが気楽に始められる手軽なラケットスポーツとして、大いに広まる可能性を秘めるピックルボール。中高年の健康維持に寄与する生涯スポーツとしても、自治体主導で普及を図る動きがみられてきました。
また、企業のレクリエーションや大学の授業でもピックルボールを導入する例が増えており、JPAでは自治体や企業、大学等の依頼を受けて体験会を開催し、指導員※3を派遣するなど対応しています。
各協力団体は練習施設の確保など普及上の課題に直面していますが、JPAでは体験会を希望者が8人くらい揃ったら「可能な限り開催する」方針とか。最近テレビ・新聞などでも取り上げられ、熱い視線が注がれ始めたピックルボール。今後の盛り上がりに注目です!
※3【ピックルボール指導員】
現在、国内に世界基準のライセンス指導員が10人ほどいる。JPAでは、まだ指導員を養成する体制が整っていないが、今後の普及状況によって指導員養成講習会の開催も視野に入れている。
▲和気あいあいと楽しく活動する世田谷ピックルボールクラブのみなさん。
<日本ピックルボール協会(JPA)>
設立年:2015年4月
会 長:谷口陽子
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「たくさんの方に体験していただき、また楽しんでいただいて、普及を目指します」
<世田谷ピックルボールクラブ>
設立年:2018年11月
代表者:稲葉涼美、村上直子
登録者数:約20人
練習場所:世田谷区内体育館など
会 費:1回の参加費300円(会場利用料、運営費等)、ピックルボール初体験は無料
e-Mail:setagayapbc@gmail.com
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「現在は世田谷区内の小中学校体育館の空いている場所を会場に練習しているので、区内各地を転々としています。今後は固定練習会場を確保し、練習や体験会などの告知を増やしていく考えです。関心のある方はぜひ、ご連絡ください」